◇医療情報−蛋白喪失性腸炎





蛋白喪失性腸炎…漢字7文字の長い名前ですが、簡単に言うと、血液中のタンパク質が、小腸などの消化管の中に漏れ出てしまうことを特徴とする疾病群(病名ではなく、そういう症状を示す病気をひっくるめた言い方)です。正常でも、血管から消化管へのタンパク質の漏出は起きているのですが、漏れたタンパク質は、すぐに再吸収され、また体の中で再利用されるのです。しかし、何かの病気が原因で、漏れ出るタンパク質が異常に多くなってしまいますと、血液中のタンパク質が足りなくなり、色々な症状が出てくるのです。この症状は、原因が様々なので、年齢、性別にかかわらず、誰にでも起こり得ます。ただし、原因が、腸リンパ管拡張と呼ばれるリンパ管の病気である場合、起こりやすい犬種として、ソフトコーテッド・ホィートン・テリア、バセンジー、ルーデンフンド、ヨークシャー・テリアが挙げられます。


【原因】
 原因は大きく2つに分けられます。
 一つは、リンパ管の異常です。リンパ管は、体中にある、リンパ液を通している管で、血管ともつながっています。例えば、心臓病で血液の流れが悪くなり、同時にリンパ液の流れが悪くなるとか、または、リンパ管を圧迫するようなできもの(ガンなど)があると、リンパ液の流れが悪くなり、流れが滞った所から、大量にタンパク質が漏出します。
 もう一つの原因は、消化管粘膜の異常です。消化管の粘膜が、腸炎などで異常をきたすと、それだけで漏出するタンパク質が多くなりますし、再吸収も上手くいきません。
 これらが原因となり、タンパク質が大量に漏出するのです。


【症状】
 多くは、慢性の、または、断続的な軟便、下痢を起こします。元気消失や体重減少、嘔吐が見られることもあります。また、血液中のタンパク質は、血管内に水分を引っ張り込んで、適度な血液量を保つ働きがあるのですが、タンパク質が少なくなってしまいますと、血管の外に水分が漏れます。それが皮膚に漏れると浮腫(ふしゅ。むくみのこと)を起こしますし、胸の中に漏れると胸水となり呼吸困難が起きます。また、お腹の中に漏れると腹水となりお腹周りが膨らんできます。


【診断】
 血液検査で低タンパク血症を確認します。しかし、低タンパク血症は、肝臓が悪くて体内のタンパク質が作られていない時にも現れますし、腎臓からタンパク質が漏れて尿中に出ていってしまっている時にも現れます。つまり、それらを血液検査、尿検査などで除外する必要があります。
 また、当然、蛋白喪失性腸炎の原因となった病気も追究しなければなりません。それを調べるために、胸部レントゲン、心臓の超音波検査、心電図(いずれも心臓病を調べるもの)、糞便検査、腹部レントゲン、内視鏡、試験的開腹術などが必要になることがあります。


【治療】
 蛋白喪失性腸炎の原因となっている病気を治療すれば、自然と、この症状は改善していきます。原因に応じて、抗生物質、抗潰瘍薬、ステロイド、利尿薬、食餌療法などが用いられます。原因となっているものを除去できるのであれば、手術も必要になりますし、原因が腫瘍であれば、化学療法(抗ガン剤)を行なうこともあります。


【予後】
 原因となっている病気によって経過や予後は様々です。ただし、自然治癒はほとんど望めませんので、長期間の治療が必要なことは覚悟しなければなりません。




獣医師 斉藤大志  2003.12.9

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