◇医療情報−タマネギ中毒

  犬・猫にタマネギを食べさせると中毒を起こすので、絶対に食べさせてはいけないということはほとんどの飼い主さんが知っていることと思います。でも、もしも目を離したスキに食べてしまったら・・・というときのために勉強しておきましょう。

 どうしてタマネギを食べさせてはダメなのか?
 答えは貧血を起こすからです。
 ただし、タマネギに含まれる有毒成分は他のネギ(長ネギなど)にも含まれているので、すべてのネギを食べさせてはいけません。もちろん加熱しても有毒成分は消えませんし、煮込んだスープにはネギのエキスとしてやはり有毒成分が含まれているので、実を取り除いたからといっても飲ませたらやはり中毒になってしまいます。
 また一般的に犬は加熱したタマネギはその甘味で躊躇なく食べてしまうと言われているので気を付けましょう。

 貧血を起こす詳しい仕組みは次の通りです。結構難しいので、興味のある方は読んでみてください。

 タマネギに含まれている有機チオ硫酸化合物という酸化作用をもつ毒物が赤血球(血液中の酸素を運ぶ細胞)のヘモグロビンという赤い色素を酸化させ、赤血球内にハインツ小体という病変を作ってしまうのです。このハインツ小体を持つ赤血球は脾臓や細網内皮系という組織で破壊されたり、血管の中を流れている間に破裂(溶血と言います。)したりという過程を経るので、急速に赤血球の数が減少して場合によっては重症の貧血を起こします。赤血球が破壊される速度が速いので、赤血球から出てしまったヘモグロビン(赤い色素)が腎臓で尿として出されると、赤い尿を排出するようになります。またヘモグロビンは、黄疸の黄色い色素の原料でもあるので、後に黄疸がみられることもあります。

 症状は貧血を起こすことが根底にあるので、元気・食欲がなくなったり、運動を嫌ったりします。赤いおしっこをすることもあります。

 治療は輸血あるいは点滴が一番の治療法です。タマネギの有毒作用(酸化作用)を中和する目的でビタミン剤(ビタミンC、E)を併用することもあります。

 タマネギ中毒のみで死亡することはほとんどありません。しかし元々貧血を持っていたり、見た目は元気であっても実は隠れた病気を持っていたときには命にかかわることもあるので、絶対に食べさせるのはやめましょう。特にタマネギが入った、あるいは調理でタマネギを使った後の残飯の処理には注意して、飼育している犬・猫が盗み食いをできないようにして下さい。しつけも重要です!



獣医師 加藤 拓也 2001.11.13

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