◇医療情報−ストレス症候群



日常的に遣う「ストレス」という言葉。犬・猫も私達と同じようにストレスによる病気を起こします。今回はこのストレスについてのお話です。

動物は周りの環境の変化に対して、神経やホルモンの機能によって体内の状態を一定に保つように常に調整しています。しかし、外から与えられた刺激によって動物の体内で「ストレス」という歪みが生じます。この歪みが強すぎると一定に保たれているバランスが崩れてしまい病気になってしまいます。
つまり「ストレス」とは動物の状態のことで、原因となった刺激は「ストレッサー」と言います。そして、ストレス(動物体内の歪み)が病気として目に見えるものを「ストレス症候群」と言います。

原因(ストレッサー)は非常にたくさんありますので、ここでは代表的なものの一部を挙げておきます。
・ 寒さ、暑さ、騒音、振動
・ 有害大気、酸素欠乏、薬剤、毒物、飢餓
・ ウイルス、細菌、細菌毒素
・ 痛み、電気ショック、過度の精神的疲労
                などです。


これらの刺激が加わるとその原因の種類に関係なく、動物は一定の反応と経過をとります。


反応 
 1.副腎皮質の肥大(ステロイドホルモンを大量に放出します)
 2.胸腺リンパ組織の萎縮(免疫力が変化します)
 3.胃腸の潰瘍
 4.血液成分の変化


経過 ストレッサーの刺激によって以下の経過をとっていきます。


@ 警告反応期-ショック相
刺激が加わった直後に起こる体の反応で、様々な機能が一時的に低下します。
 ・ 刺激に対する抵抗力の低下
 ・ 体を構成している組織の障害
 ・ 交感神経の活動を抑制→刺激に対する抵抗力の低下
 ・ 体温低下
 ・ 血圧低下
 ・ 筋肉の緊張の低下
 ・ 低血糖
     などです。

A 警告反応期-反ショック相
ショック相から次の抵抗期への移行を行ないます。体には次のようなことが起こります。

 ・ 副腎皮質ホルモンの変化
 ・ 体温,血圧上昇
 ・ 筋肉の緊張度の増大
 ・ 血糖値上昇
 ・ カロリー消費量増大
   などです。


B 抵抗期
ある期間、ストレッサーの刺激を受けつづけていると体はさまざまな反応を起こして、その環境に適応します。
その結果、動物は何事もないかのように日常生活を営みます。この期間は体の抵抗力がグレードアップしているので、別の刺激に対しても俊敏に適応します。
しかし、その抵抗力にも限界があるので、更なる刺激やもっと長い期間の刺激によって、抵抗力が底をつくと次の疲憊期に移行します。


C 疲憊期
環境からの刺激に対して抵抗することができないので、体のバランスを維持できずに病気になってしまいます。その病気を総称して「ストレス症候群」と言います。この場合、動物自身にも抵抗力がないので、治療の甲斐なくそのまま命を落としてしまうこともあるのです。

ですので、正しい飼い方というのは非常に重要で、かつ難しくもあるのです。動物のためにと思っていたことが実はストレッサーになっていたり、傍から見ても甘やかしていた動物がそのせいで疲憊期直前になっていた…ということも起こり得るのです。

しかし、抵抗期には体の抵抗力が上昇しますから、ある程度の刺激も必要という学者もいます。皆さんも1度振りかえって、どれが適度でどれが過度の刺激になっているのか?
そういったことをリストアップしてみて、そして家族で、あるいは動物病院のスタッフを交えて話し合う機会をつくってみてはいかがでしょうか?



獣医師 加藤拓也 2002.11.25

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