◇医療情報−皮膚組織球腫






皮膚組織球腫は、ワンちゃんの皮膚に特有の腫瘍です。人間の皮膚組織球腫とは類似点がなく、他の動物では認められません。腫瘍は、老齢の動物の病気と思われがちですが、この腫瘍は、老齢のワンちゃんよりも、むしろ若いワンちゃんに多く発生します。症例の50%は年齢2才未満のワンちゃんに発生しているという報告もあります。純血種のワンちゃんの方が、雑種犬よりも発生率が高く、ボクサーとダックスフントが好発犬種です。


【原因】
原因は分かっていません。ウイルスが原因という説もありますが、原因物質が発見されている訳でもなく、腫瘍を感染させる試みも成功してはいません。


【症状】
腫瘍は、頭部(特に耳介)、足(特に後ろ足)、体幹に最もよく認められます。首、前足、尾にも時々見られます。皮膚病変は、丸く球状の膨らみで、表面には光沢があり、二次的に脱毛や潰瘍が形成されることもあります。赤くなることもありますが、ワンちゃんが気にすることはまれです。前足などは、ワンちゃんの目にもつきやすいので、よくなめてしまう傾向にあるようです。大きさは直径0.5mm〜4cmで、大部分は1〜2cmです。


【診断】
腫瘍を、注射針で刺し、細胞を採ってきて、顕微鏡で観察します(細胞診)。組織球腫は、腫瘍の中でも、細胞診で診断がつく、数少ない腫瘍です(多くの腫瘍は、細胞診だけでは確定診断に至りません)。


【治療】
成長が速く、悪性疾患と思われがちですが、実はこれは良性の腫瘍で、通常は、この腫瘍の周りにリンパ球が集まってきて(リンパ球浸潤と言います)、自然に消えてなくなります。ただし、あまりにも大きかったり、場所によって、ワンちゃんが気にするような時は切除します。まれに、切除したところや別のところに新しい腫瘍が発生します。ボコボコと色々なところに出る(多発性)ものもまれに報告されていますが、やはり治療しなくても8〜12週間で消失します。ただし、全部が全部、同時には消失しないことがあります。


【予後】
基本的に良性の腫瘍なので、転移もなく、予後は良好です。


※悪性組織球腫もありますが、これとは病態は異なります。




獣医師 斉藤大志 2003.3.25



トップ アイコン
トップ
トップ アイコン
医療情報