◇医療情報−猫の糖尿病


糖尿病とはインスリン(インスリンは膵臓のランゲルハンス島B細胞から分泌され、生体で血糖値を下げる作用をもつ唯一のホルモンです。)の分泌あるいは作用が低下し、多飲・多尿、高血糖、尿糖排出などの症状を示す疾患であり、糖の代謝のみならず、脂質やタンパク質の代謝にも障害をきたします。この結果全身の主要な臓器に障害をひきおこすこととなり、しばしば重篤な合併症をともなうことがあります。


【原因】
 膵臓のランゲルハンス島におけるインスリンの低下・不全が原因となりますが、インスリンが作用する組織における抗インスリン因子の存在によっても発症します。これらには、遺伝的要因のほかに肥満、感染などの環境要因が関与しています。またランゲルハンス島に自己免疫反応や、異常タンパクであるアミロイドの沈着がおこると、細胞の変性・破壊を招き糖尿病をひきおこします。
人間同様、食生活の問題もかなりのウエイトを占めます。


【症状】
 糖尿病の猫にみられる症状としては、元気消失、多飲・多尿、体重減少から嘔吐や脱水も認められるようになります。犬の糖尿病とは異なり、猫では必ずしも多食とはならず、反対に減退するものもあります。また白内障となることが少ないのも犬とは異なる点です。更に病気の進行により、高血糖による高浸透圧性や代謝異常によるケトアシドーシス性の昏睡に陥り、重篤なものは死に至ることもあります。また糖尿病は全身の主要臓器において種々の合併症をひきおこすことが多く、細菌感染による膀胱炎、腎不全、肝硬変、急性膵炎などいずれも致死率の高いものです。


【診断】
 高血糖を示す疾患として糖尿病のほか、重度の感染症、腎不全、膵炎などがあり、鑑別には詳細な血液検査、尿糖検査が必要です。
【治療】
 人や犬と同様に食餌療法および経口血糖降下剤や、インスリン投与による薬物療法が中心となります。


【予後】
 ほとんどの場合自宅で飼い主さんが治療を行うこととなるため、病気を理解して病気の管理を根気よく続けていただく必要があります。一生つき合わなければいけなくなることもあるので、糖尿病にならないように気を付けてあげて下さい。



VT 加々美敏子 2002.7.8


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