◇医療情報−副腎皮質機能亢進症



副腎は腎臓の上部にある小さな臓器で、その内部は皮質と髄質に分かれています。副腎皮質からは、身体の電解質を調整するホルモン(鉱質コルチコイド)や、糖質代謝を助けるホルモン(糖質コルチコイド)など多くのホルモンが分泌され、生きていく上で非常に重要な働きをしています。この臓器の機能が異常に高まった状態を「副腎機能亢進症」といいます。本症は犬に多く、猫ではまれです。

原因:副腎皮質機能亢進症は原因によって、以下の3群に分けられます。

1、クッシング症候群
副腎皮質ホルモンの分泌を促す副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を過剰分泌させる脳下垂体の異常(過形成や腫瘍)が原因となり大量のステロイドホルモンが長期にわたって分泌されるために調子が崩れてきます。副腎皮質機能亢進症のうち約80〜85%を占め、犬種としてはボクサー、ダックスフンド、ミニチュア・プードル、ビーグルに多いと言われています。

2、原発性副腎皮質機能亢進症
副腎自体にできた腫瘍などの病変が原因となり、その影響によって副腎皮質ホルモンが過剰分泌されるものを言います。副腎皮質機能亢進症のうち約10〜20%を占め、犬種としてはジャーマン・シェパード、トイ・プードルに多いと言われています。

3、医原性副腎皮質機能亢進症
副腎皮質ホルモンの過剰あるいは長期投与に起因するものを言います。


症状:
症状は非常にゆっくりと経過しますが、本症だとわかったときにはかなり症状が進行していることが多いです。初期には尿の量が増え、水を大量に飲むようになったり、異常にたくさん食べる、元気がないなどの症状が現れ出します。
進行すると、肥満が目立つようになり、また筋肉が弱くなったり、皮膚が薄くなったりして、お腹が太鼓のようにふくれ、足が細くなります。皮膚は毛が乾いて弾力性がなくなり、痒みを伴うことなく脱毛します。また、皮膚に色素が沈着して黒ずんだ皮膚になったりします。

診断:
以前にステロイドを投与したことがあるかどうかを確認します。そして症状、血液検査、尿検査、などから総合的に判断しますが、確定診断には、副腎皮質機能検査が必要となります。

治療:
原因によって、内科療法あるいは外科療法のいずれかが選択されます。脳下垂体の異常が原因ならば、外科的な切除は非常に困難で、また危険性が大きいので、副腎皮質ホルモンを分泌する副腎の細胞を破壊する薬剤を一生涯投与していく内科療法を行います。 副腎腫瘍が原因の場合は、切除可能ならば外科手術が第一選択となりますが、切除不可能な場合は副腎皮質ホルモンの合成を阻害する薬剤を用いて、内科療法を行います。そして、医原性の場合には、ステロイドの投与を中止しますが、急に中止すると危険なこともあるので、普通は徐々に少なくしていくようにします。

※ステロイドホルモンについて
ステロイドホルモンはインスリン(膵臓から出るホルモン)の作用を低下させます。インスリンは血糖値を下げる働きをするので、クッシング症候群の動物は糖尿病になることが多いと言われています。同時にステロイドホルモンは体の免疫力を低下させるので、クッシング症候群の動物は細菌やウイルスといった様々な病原体に感染しやすく、また症状も非常に重くなります。(参照 「ステロイドについて」)


VT 望月慎也  2002.9.10



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