◇医療情報−クレチン病(先天性甲状腺機能低下症)



ペット・ショップにいるたくさんのワンちゃんの中で、頭だけ大きかったり、足が異常に短かったりするワンちゃん、見たことありませんか?見た目は愛嬌があり、お人形みたいに可愛く映りますが、重大な先天性の病気を持っている可能性があります。
クレチン病は、先天的な甲状腺機能低下症であり、骨格と中枢神経系の正常な発達に必要な甲状腺ホルモンが、出ない、もしくは、出てもうまく働かない時に起こります。なので、特徴的な症状は、「アンバランス」な成長不良と、精神的な発達不良です。


【原因】
先天的なので、遺伝的とも考えられますし、その他、成長期の
栄養不良、病気の併発も関連してきます。首の気管の両脇にある、甲状腺という組織から甲状腺ホルモンが出るのですが、甲状腺がきちんと成長しない、甲状腺ホルモンを作れない、甲状腺を刺激するホルモンが出ない、などが原因となって起こります。



【症状】
骨格的には、頭の形が短く幅広、アゴの骨が短い、頭が大きく四肢が短い、背中が曲がっている、歯がなかなか生えない、歩き方がおかしい、などがあります。精神的には、鈍い、だるそう、反応が悪い、ボーっとしていることがあるなどがあります。その他の症状として、食欲不振、便秘、脱毛、パピーコート(ふわふわした副毛)のみで、長くしっかりした主毛が生えてこない、毛がパサパサしている、ふるえ、知覚過敏などがあり、このような異常は、大抵3-8週齢で気付かれます。


【診断】
上記の症状と、甲状腺ホルモンの検査で診断します。また、首のところの甲状腺が、ポッコリと2つ、腫れている場合もあります。


【治療】
生涯を通じて、甲状腺ホルモンの薬の投薬が必要になります。
また、甲状腺ホルモンの定期的な測定(投薬によって、きちんとホルモン量が上がっているかを調べる)も必要になるでしょう。
また、食欲不振や便秘などがあれば、それに対する対症療法も必要になってきます。



【予後】
一生涯の投薬が必要になることが多いですし、成長期の不可逆的な(元に戻らない)筋肉・骨格系の異常があるため、予後は注意が必要です。




'04.10.9 獣医師 齊藤 大志  

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