◇医療情報−肛門嚢炎





 肛門の左右両脇には、イタチやスカンクのように、悪臭を放つ一対の分泌腺である肛門嚢(のう。袋のこと。)があります。その内容物は、ウンチをする際や、興奮した時に、導管と呼ばれる管を通って、肛門近くの開口部から排出されます。内容物は大抵、魚の腐ったような臭いを発しますが、その性質は様々で、サラッとした液体のような子もいれば、ドロッとした粘性の高い泥状の子もいます。肛門嚢の導管がなんらかの原因で閉塞したり(ドロッとした子だと元々詰まりやすいです)、内容物の分泌亢進などによって、嚢内に分泌物が充満し、そこに細菌感染が生じると、肛門嚢炎になります。



【原因】
 慢性的な軟便、または下痢を起こしていて、肛門周囲が汚染されている子で起こりやすいとされています。また、肛門括約筋などの筋肉の緊張力が低下しやすい、小型犬や肥満犬でもよく見られます。肛門嚢炎に化膿菌が関与し、導管の閉塞が持続すると、嚢内は膿で充満し、膿瘍(のうよう)となります。犬では肛門周囲の疾患の中で最も発生頻度が高く、年齢や性別による差はありませんが、特にミニチュア・プードル、トイ・プードル、チワワなどの小型犬に多いとされています。



【症状】
 肛門嚢の炎症や、分泌物の貯留に伴う、肛門周囲の不快感に起因した様々な症状が見られます。つまり、肛門周囲を舐めたり噛んだり、肛門を地面や床に擦り付けて歩く独特の動作をしたり、自分の尾を追いかけてグルグル回る動作をしたりします。ひどい時は、慢性的な不快感のために犬猫の性格が変わることもあります。肛門嚢炎が進行し、膿瘍が起きると、発熱から食欲低下などの症状が現れ、さらに進行すると、肛門嚢の部分の皮膚が破れて穴が開き、膿の排出、出血が見られます。



【診断】
 症状、肛門嚢のたまり具合で診断します。また、肛門嚢の場所からの膿の排出、出血があれば、明らかに分かります。



【治療】
 肛門嚢の分泌物の軽度の貯留であれば、定期的に肛門嚢をしぼり、内容物を出してあげるだけで済みます。症状が重い場合は、化膿止めの抗生物質の内服や、肛門周囲の消毒も併用します。また、肛門嚢が破裂した場合、化膿止めの内服と消毒を集中的に行い、自然に傷があがるのを待ちます。それが再発を繰り返す場合は、肛門嚢ごと摘出してしまう手術が必要な場合もあります。



【予後】
 肛門嚢を摘出してしまえば再発はしませんので、予後は良好です。



※猫では
慢性的な軟便、または下痢を起こしていて、肛門周囲が汚染されている子で起こりやすいとされています。また、肛門括約筋などの筋肉の緊張力が低下しやすい、肥満猫でもよく見られます。肛門嚢炎に化膿菌が関与し、導管の閉塞が持続すると、嚢内は膿で充満し、膿瘍(のうよう)となります。





獣医師 齋藤大志 2002.10.15


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