◇医療情報−肛門周囲腺腫





何だか長ったらしい名前ですが、意味は簡単です。肛門の周囲にある分泌腺に発生する腫瘍、という意味です。この腫瘍は、肛門周囲や尾の付け根、犬では包皮(チンチンを包む皮)の外側の皮下に散在する、肛門周囲腺という分泌腺から発生し、かたいしこりとして認められます。


【原因】
 良性の肛門周囲腺腫はオスに多く見られ、メスの10倍程、発生頻度は高いです。メスの場合、悪性の肛門周囲腺癌(ガン)がほとんどです。なぜこのような性差が見られるかというと、この腫瘍の発生には、雄性ホルモン(男の子の性ホルモン)が関与しているからです。そのため、去勢したワンちゃんでは、この腫瘍の発生はほとんど見られず、逆に、性ホルモンが多量に分泌される副腎皮質機能亢進症では、メスでもこの腫瘍が見られることがあります。


【症状】
 腫瘍自体が小さい場合、無症状か、お尻を気にして舐めたり、地面に擦り付けたりするだけですが、ある程度発育すると、腫瘍の表面に潰瘍ができ、出血したり、化膿したりします。また、その大きさがかなり大きくなると、肛門自体を圧迫し、排便障害をひき起こします。また、悪性のものでは、周囲のリンパ節、腹腔内臓器、脊椎などに転移して、重篤な症状が出ることもあります。


【診断】
 肛門周囲にできたしこりに針を刺し、細胞を採ってきて、顕微鏡で調べます。それにより、肛門周囲腺の腫瘍は、ある程度特定できます(細胞が特徴的な形をしています)。しかし、良性の腺腫か、悪性の腺癌かは、それだけでは分かりませんので、全身麻酔をかけて、そのしこりをまるごと摘出し、病理検査をする必要があります。また、近接した臓器として、肛門嚢(のう。袋のこと)にも同様な腺腫、または腺癌が発生することがあります。


【治療】
 細胞を観てみて、肛門周囲腺の腫瘍が疑われた場合、手術により、そのしこりを摘出します。去勢していないオスの場合は、同時に去勢手術も行います。それにより、再発率を下げることができるからです。また、そのしこりが肛門全体に発生し、全て取りきれない場合、去勢手術のみを行い、腫瘍が自然に小さくなるのを待つ場合もあります。ただし、そのしこりが悪性の腺癌の場合、去勢による効果は期待できません。


【予後】
 一般にこの腫瘍は、良性と診断されても、経過とともに悪性に変化することがありますので



獣医師 斉藤大志 2002.10.25

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