◇医療情報−犬の骨肉腫



犬で最も多くみられる原発性の骨腫瘍で、骨格由来の悪性腫瘍の約85%を占めます。
多くのケースが中年から高齢にかけて発生しますが、若齢における発生も認められ、特に原発性の肋骨骨肉腫は若い成犬に発生しやすいようです。また、大型から超大型犬で発生が目立ちます。約75%は四肢に発生し、残りがその他の骨格(下顎、上顎、脊椎、頭蓋骨、肋骨、鼻腔、骨盤等)に認められます。
病因はまだ不明とされています。
局所的に非常に攻撃的で、骨の融解・産生、軟部組織の腫脹、病的骨折などがみられます。また、転移性も高く、疾患の早期に発生します。


【臨床症状】
四肢の骨肉腫の犬は一般に跛行、局所腫脹を訴えます。
また、様々な程度の疼痛を伴いますが、それは皮質骨の融解に誘発された微小骨折や骨膜破壊によるものと考えられます。中には明瞭な病的骨折を伴う急性で重度の跛行を示すものもいます。
その他の部位に発生する骨肉腫の症状はその部位毎により異なります。


【診断】
病歴、身体検査、レントゲン検査により仮診断が可能です。しかし、最終的な診断は骨生検を行うことにより確定します。
また、転移性の高い腫瘍ですので、全身への拡散の徴候を検査することが重要です。


【治療】
症状の緩和のための断脚手術がよく行われますが、90%の犬で来院時に既に潜在的な転移病巣を有していますので、断脚のみの治療では生存期間の中央値は3-4ヶ月にしかなりません。そのため、生存期間を改善するためには断脚(四肢以外ではその病変部位の切除)に抗がん剤治療や放射線治療などを併用します。


【予後】
繰り返しになりますが、非常に転移性の高い腫瘍ですので、基本的に予後は良くありません。





獣医師  堀吾郎  2003.1.20




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