◇医療情報−肝リピドーシス



フォアグラ…おいしいですよネ。私は食べたことないですが。
あれは、特別に太らせたガチョウの肝臓ですが、もし猫ちゃんの肝臓があのようになってしまったら…どうしましょう。肝リピドーシスは、まさにフォアグラなのです。肝臓を通過する脂肪というのは、
(1)食べ物から摂取した脂肪、
(2)体の脂肪組織から運搬されてきた脂肪、
(3)肝臓で合成された脂肪に大別されますが、肝リピドーシスは、主に(2)の脂肪がたまってしまうものとされています。通常、肝臓でエネルギーとして用いられない脂肪は、体の脂肪組織に運ばれて貯蔵されますが、その運搬役は、アポタンパク質と呼ばれるタンパク質の一種です。タンパク質が口から十分に摂取されない場合、当然、運搬役であるアポタンパク質も合成されない訳ですから、脂肪が脂肪組織に運ばれず、肝臓にたまってしまいます。このようにして、肝臓に過
度の脂肪が蓄積した状態を、肝リピドーシスといいます。

【原因】
脂肪の代謝やホルモンの異常、栄養障害、薬物、毒物、さらには肝臓に十分酸素が供給されない場合など、様々な原因によってひき起こされますが、元になる病気としては、慢性泌尿器疾患、炎症性腸疾患、腫瘍、膵炎、甲状腺機能亢進症、糖尿病、ダイエットなどが挙げられます。難しい病名をいくつも挙げましたが、猫における肝リピドーシスで一番問題になるのは、原因が特定できない、特発性肝リピドーシスと呼ばれるものです。この場合、引っ越しやペット・ホテル、あるいは家族構成の変化など、猫ちゃんの生活環境の変化が引き金になっていることもあります。ストレスによる食欲不振により、十分な栄養、特にタンパク質、及びカロリーの摂取ができなくなり、肝臓に脂肪がたまってしまうのです。特発性肝リピドーシスは、肥満した猫に多く見られますので、肥満した猫が、一週間以上も食欲不振に陥った場合は注意が必要です。

【症状】
元気消失、嘔吐、下痢、便秘、体重減少(ひどい時は25%も減ることがあります)、黄疸(白目の部分や歯茎などが黄色くなる)などが認められます。腹部の触診では、脂肪で腫れ上がった肝臓が触知できることがあります。

【診断】
血液検査(特に肝臓系のチェック)やレントゲン、超音波検査で、ある程度しぼ込
めますが、確定診断には、肝臓のバイオプシーが必要です。細い注射針で、皮膚を通して肝臓を刺し、組織を一部吸い取って調べたり、お腹を開けて肝臓の一部を切除して調べたりする方法で、十分診断が可能です。

【治療】
原因となる病気が特定できる場合には、その病気の治療を行うことが、治療につながります。特発性肝リピドーシスの場合には、適切なタンパク質とカロリーの補給を積極的に行うことが最も重要です。強制的に口から食べさせることが不可能な場合には、麻酔をかけて、鼻カテーテル(鼻から食道へ通す管)や胃チューブ(体外から直接、胃に食物を流し込む管)などを留置し、それを用いて栄養補給を行います。

なお、当院では、入院している猫ちゃんはもちろんのこと、ホテルの猫ちゃんの食欲も、毎朝夕、きっちりチェックし、3日以上食欲不振が続く猫ちゃんには、何かしらの処置を講じています。


獣医師 斉藤大志 2002.8.5





トップ

医療情報