◇医療情報−腸重積(腸閉塞)



【腸重積(腸閉塞)】
 犬や猫は草を食べて嘔吐したりするので、嘔吐はたいしたことはないと放置しがちです。しかし嘔吐や食欲不振をおこす重大な疾患の一つとして腸重積があります。
 腸管腔の中にそれに連なっている腸管の一部が反転してはまり込み、外と中に重曹した腸の状態でこれによって腸管内の内容物が通過できなくなってしまう現象が腸重積です。多くは腸管が肛門側い向かってはまり込むが逆のこともあります。この腸重積はどこの部位の腸でもおこります空腸や回腸のあたりによくおこります。このように腸重積によって腸管内の内容物がその部位を通過できなくなった状態や別のなんらかの原因で腸の通過障害がおきてしまいそのためにおこる重篤な状態を総称して腸閉塞(イレウス)と呼んでいます。


[原因]
 腸重積のおこる理由はまだ謎が多く原因はよくわかっていません。おそらく腸の動き(腸蠕動)の異常や何らかの腸管の刺激によりおこると考えられています。
 腸重積は人では子供に多く発症するとされています。犬猫でもやはり子犬子猫の方が成熟した犬猫よりも多くおこるといわれていますが、どの年齢でも発症します。とくに原因がなく発症することが多いが若い犬猫では寄生虫症や腸炎により二次的に腸蠕動が増し、腸の運動性のアンバランスで腸が重なってしまう可能性もあります。 
 腸重積から腸閉塞となりますが腸閉塞をおこす原因は腸重積だけではなく、異物を飲みこんでそれが腸のどこかにつかえてしまったり、腸に腫瘍ができるなどいろいろの原因があります。


[症状と特徴]
 おもな症状は突然に食欲がなくなり、不機嫌になることです。特に腹痛があると触られることを嫌がったり膝に乗ることを嫌がり、また嘔吐することが多くなります。中には便に少量のイチゴゼリー状の粘液や粘血便が混ざり、その後の排便をしなくなることもあります。腹部を触られると重責部である塊を確認できることもあります。(でもみなさんは触らない方がよいです)
 腸重積がおこると腸に栄養を与えるために腸に沿ってくっついている血管や腸間膜も反転する腸と一緒に入り込んでしまい、これにより反転した腸の血行遮断がおこります。腸重積の程度とその部位によって、またこれらの腸が完全に閉塞した場合と、ごくわずかな腸内容物が通過できる場合かで現れる症状の重さが異なってきます。腸が完全に閉塞してしまうとその閉塞部位により胃に近い側の腸の中にはガスや液体が充満します。そのために腸は拡張し、まるで細長い風船のように膨らみ、腸壁が薄くなります。


[診断]
 単純X線写真の腸のガス像を参考にし、バリウムを投与して閉塞部を診断します。腸重積が長時間に及んだり慢性の場合には局部の癒着やうっ血で腸を正常に整復させることができなくなる可能性があります。また腸の重なった部分を伸ばすと、その部分の腸は紫色で壊死して快復力がなく、腸の表面に亀裂がおこり、腸に穴があくことがあります。このような場合にはその部位の腸を切り取りつなぎ合わせなければなりません。
 またときどき局所性の腹膜炎をおこすこともあります。不完全な閉塞の場合には食欲が細く、嘔吐はあるがその程度はひどくない、便もでるので診断が難しくなります。完全な閉塞の場合には、時間の経過とともに閉塞部の腸管の拡張が進み、それにともなって体液(電解質)が失われて脱水状態になります。さらに腸管内の毒性物質を吸収してしまうことによって重篤な状態になるので早期の診断と治療が必要です。


[治療]
 腸閉塞は緊急疾患です。たいていの場合、手術をして閉塞の原因を取り除く必要があります。通常は入院になります。


[予後]
 程度によりますが、手術をして閉塞の原因を取り除けば予後良好です。




 VT 須田 智子 2002.7.8

トップ アイコン
トップ
トップ アイコン
医療情報