◇医療情報−アセトアミノフェン中毒





動物病院で処方される薬には、動物用医薬品の他に、人間の医薬品も含まれています。しかし、人間の医薬品が、全て動物に使用できるかと言うと、そうでもありません。人間が飲めば役に立つものでも、動物が飲むと死んでしまう、そんな薬もあります。そのような危険な薬の中に、アセトアミノフェンがあります。アセトアミノフェンは、人間の鎮痛薬や解熱薬の多くの薬に含まれる薬剤です。これを誤って服用することで、動物に症状が出ることを、アセトアミノフェン中毒と言います。


【原因】
部屋に散らかっている人間の薬を、誤って動物が服用する、あるいは、触って熱があるからと、人間が動物に勝手に解熱薬を飲ませる等で、アセトアミノフェンが動物の体に入ることによって起こります。
通常、アセトアミノフェンが体内に入ると、それは分解され、有毒な物質になります。ワンちゃんは、その有毒物質を無毒化する酵素を体内に持っていますが、猫ちゃんは持っていません。ですから、ワンちゃんは大量にアセトアミノフェンを摂取した時、猫ちゃんはちょっとでも摂取すると、中毒症状を起こします。
その有毒物質は、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンと結合して、メトヘモグロビンとなり、赤血球が普段通り体中に酸素を運ぶ働きを妨げます。
また、その有毒物質は、細胞を壊す力があるため、特に、肝臓の細胞が壊れていきます。


【症状】
メトヘモグロビンが作られてしまうことによる、チアノーゼ(全身が酸欠状態になり、舌などの粘膜の色が青くなります)、呼吸困難(全身が酸欠状態になり、少しでも酸素を取り入れるために、呼吸が速くなります)が起こります。その他、顔面浮腫(顔が腫れる。なぜかは不明)、うつ状態、低体温、嘔吐などが起こります。進行すると、衰弱、昏睡、最悪の場合、死亡してしまいます。


【診断】
飼い主様から、投与歴を聞き出すのが、最も効果的です。あとは、血液検査(肝臓の障害)などから判断します。


【治療】
まず、アセトアミノフェンを飲んで、すぐ気付いた場合は、吐かせることが重要です(特に猫)。動物に、一握りの塩を舐めさせ(飲まない場合はバターに混ぜると良い)、吐かせます。その後、動物はのどが乾き、水を大量に飲み、それをまた吐きます(これは胃の中を洗浄する効果があって良い)。その後、すぐに動物病院で治療を行います。
これができなければ一刻も早く動物病院で吐かせる注射をします。
また、治療には肝臓を保護する薬の注射、および、静脈点滴が有効です。その他、有毒物質と結合して無毒化する物質の投与、メトヘモグロビンを正常なヘモグロビンに戻す薬の投与、活性炭(薬剤が吸収される前に吸着して、便と一緒に排泄する)の投与が有効です。
メトヘモグロビン血症が重度の場合は、全身酸欠になるので、呼吸困難な場合は、酸素吸入、気管にチューブを入れることによる気道の確保が必要なこともあります。


【予後】
急性症状が過ぎれば、予後は良好です。


                         
獣医師 斉藤 大志 2003.2.19

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