◇医療情報−PDA:動脈管開存症



犬で多い先天性の心疾患です。胎子期に使用され、通常であれば生後2-3日で閉じてしまう心臓の血管(=動脈管)が、それ以降も閉じないことにより循環に問題が起こります。一般に動脈管を介して大動脈基部から肺動脈基部への血流が生まれ、肺血管と左心に必要以上の負荷がかかります。肺動脈の線維化が進んだ少数例では逆に流れることもあります。
様々な犬種で見つかりますが、特にプードル、ポメラニアン、コリー、シェルティー、Gシェパードなどに多いといわれています。猫での発生も報告されていますが、犬に比べて発生は少ないです。

症状)
まったく無症状で心臓の雑音だけが身体検査で見つかる場合が多いのですが、元気が無い、発育が悪い、左心不全の様々な症状などを示すことがあります。

診断)
レントゲン、心電図、超音波検査(カラードップラーが有効です)によって診断をすすめられます。状況によっては心臓カテーテル法によって心血管造影が行われます(典型的な例では必要ないとされています)。

治療)
一般的には外科的に動脈管を結紮する(しばる)方法がすすめられます。また近年、心臓カテーテルを利用した閉鎖法も進められて来ているようです。
ただし、血流が逆に流れている上記のケースでは動脈管を閉鎖することによって右心不全が起こって死亡するため、手術は適用できません。その場合、あくまでも対症的な治療になります。

予後)
手術をした場合の予後は良く、合併症がなければ健康な動物と変わりない余命が期待できます。手術をしない場合の予後は動脈管の太さや肺血管の血圧により変化しますが、犬の50%、猫のほとんどが1年以内に死亡してしまいます。
また、前述の手術が適用できない症例の予後は非常に悪いものとなります。



獣医師 堀吾郎 2002.9.10




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