◇医療情報−精巣の腫瘍

精巣は、男性ホルモンを分泌して体格や性格を雄らしくしたり、精子を作ったりする雄特有の臓器ですが、今回はこの精巣の腫瘍について少しふれてみます。
精巣の腫瘍にはいくつかのものがありますが、その中でも特に多いのが間質細胞腫とセルトリー細胞腫と呼ばれるものです。

間質細胞腫とは間細胞の腫瘍です。間細胞とは何かというと精巣を構成する細胞の一つで、精細管という精子を作る管と管の間を埋めている細胞です。この細胞はいわゆる男性ホルモンを放出する細胞です。
間質細胞腫は、犬の精巣の腫瘍の中では最も多く、症状として脱毛や皮膚の痒みを起こしますが、症状がないこともしばしばあります。

原因は不明ですが、老犬に多く見られ、治療は去勢です。
診断は去勢した精巣、あるいは去勢前に針を刺して(これを細胞診または生検といいます。)顕微鏡で見て診断します。

セルトリー細胞腫は同様に、セルトリー細胞の腫瘍です。
セルトリー細胞は上述の「精細管」を構成する細胞の一つで、精子を作る細胞に栄養を供給したり、エストロジェン(女性ホルモン)というホルモンを分泌しています。つまりオスでも女性ホルモンは体内で作られているのです。
症状として、全身の脱毛が左右対称性に起こります。
またこの腫瘍をもっている雄犬の1/4で雌性化といって、メスのように乳房が大きくなったりします。
そしてこの病気の1/2の雄犬は陰睾といって、精巣がお腹の中に残っていて、いわゆる「タマが降りていない」状態であると報告されています。陰睾の状態ではセルトリー細胞腫が発生する年齢も若くなる傾向があるようです。
したがって、陰睾の雄犬はできるだけ早く治療を施した方が良いのです。ただし、この場合ほとんどが去勢になります。

治療は精巣腫瘍の摘出、つまり去勢です。それと、全身の脱毛がひどいときには、それがなくなるまで週1回の間隔でテストステロン(男性ホルモン)を投与するときもあります。

しかし、どんな腫瘍であるかの診断がついてから精巣腫瘍の摘出を行うことはまれで、実際は精巣の腫瘍を疑って去勢を行い、それを検査機関に調べてもらって初めて確定診断をとることがほとんどです。

やはり、去勢は病気の予防のためにも必要なのです。

獣医師 加藤拓也 2001.5.17



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