◇医療情報−犬のリンパ腫


【犬のリンパ腫】

最もよく認められる造血系腫瘍であり,造血系腫瘍の約90%を占めます.
この腫瘍はあらゆる犬種において認められますが,ボクサー,ジャーマン・シェパード,プードル,ゴールデン・レトリバーなどで特に多く発生するようです.病因はまだ明らかにはされていません.

臨床所見)
最もよく認められる所見が末梢リンパ節障害で,1つのリンパ節のものから全身的に侵される場合まで様々です.この段階では無症状のことが多いのですが,症状が進行すると,筋力低下,抑鬱,食欲不振,嘔吐,下痢などがみられるようになり,末期においては悪液質,気道閉塞,発熱,虚脱などを起こすようになります.
消化管型リンパ腫では嘔吐,下痢,体重減少,吸収不良などの胃腸症状が中心であり,腸間膜リンパ節,肝臓,脾臓が侵されます.
縦隔型リンパ腫は腫瘍の物理的影響により呼吸困難,運動不耐性,吐出などを示します.
節外リンパ腫はその侵される部位に特異的な症状が出ます.皮膚リンパ腫,神経系リンパ腫,眼球リンパ腫などがあります.
腫瘍随伴症候群のみられることもあります.貧血,好中球増多症,血小板減少症,高カルシウム血症などがあります.

診断)
リンパ腫の動物を評価する場合,確定診断を得ること以外に全身的な評価をすることが重要になります.侵された範囲を把握し,続発する症状を理解することによって初めて適切に全身的な治療管理法を選択できるためです.
身体検査,血液検査,尿検査,細胞診,骨髄診,画像診断など様々な検査により多角的に評価を行い,その結果に基づいてステージ分けおよび全身状態の評価を行います.リンパ節の生検によって確定診断と組織学的なグレード分けを得ます.

※臨床ステージ分類
T:単独のリンパ節,単一器官(骨髄は除く)のリンパ系組織に限局.
U:所属領域の複数のリンパ節に波及.
V:全身のリンパ節に波及
W:肝臓,脾臓に波及
X:血液,骨髄,その他の臓器に波及
それぞれにサブステージがあり,aは全身症状なし,bは全身症状あり.

治療)
リンパ腫の第一選択治療は抗がん剤による化学療法です.初期の孤立性のリンパ腫の場合,外科手術を選択することもあります.

予後)
予後は様々で,臨床ステージ,組織学的なグレード,免疫表現型,解剖学的位置,高カルシウム血症の有無などによって異なります.
しかし,基本的にリンパ腫は化学療法に対する反応がよく,使用する方法にもよりますが,60-90%において完全寛解が誘導されます.また,その中央生存期間は6-12ヶ月と比較的長いものとなります.また,寛解後は関連症状を示さないことが多く,QOL(生活の質)の改善が期待できます.
治療しない場合,病態は急速に進行し,およそ1-2ヶ月で末期に至ります.


獣医師 堀五郎 2002.5.12

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