◇医療情報−レプトスピラ症(出血型と黄疸型)

この病気は、レプトスピラと呼ばれる細菌が感染することによって、様々な臓器、組織に障害を生じるものです。レプトスピラは、多くの種類の哺乳動物に感染することができるため、人間にもコンパニオン・アニマルにも感染する、人畜共通伝染病としても重要です。

病原体となるレプトスピラは、千分の一ミリ単位の細菌で、顕微鏡で見ると、細いラセン状のものが活発に回転しているのが確認できます。犬のレプトスピラ症の原因となるものは、日本では主に二種類知られており、一つはL(レプトスピラの略).カニコーラであり、もう一つはL.イクテロヘモラジーと呼ばれます。

感染源として重要なのは、すでにレプトスピラに感染している動物(犬やネズミ)の尿であり、その中には大量の菌が含まれています。その尿によって汚染された水や土を舐めたりすることにより感染が広まっていきます。そのため、この病気は、梅雨の時期のように、犬の散歩道に水たまりができる季節に多く見られます。また、レプトスピラは、感染している犬の精液や母乳などにも現れるため、交尾や哺乳によっても感染します。

犬のレプトスピラ症は、その症状により、不顕性型、出血型、黄疸型に分類されます。
 1)不顕性型…感染したレプトスピラに対して、犬の体内に抗体ができ、症状が出ることなく自然治癒してしまいます。しかし、治癒までの間にも、抗体による攻撃を受けにくい 臓器、特に腎臓に隠れたレプトスピラがこそこそと生き続け、尿中に菌をばらまいてしまいます。これは、他の犬や人間への感染源となるので、重要です。

 2)出血型…主にL.カニコーラの感染によって起こり、1〜2日間の発熱、元気消失、食欲減退、激しい嘔吐と吐血、血の混じった下痢が見られます。この型は出血性胃腸炎の症状で、俗に「犬のチフス」と呼ばれます。死亡率は高いです。

 3)黄疸型…主にL.イクテロヘモラジーの感染によって起こり、元気消失、食欲減退、嘔吐、下痢が見られます。また特徴として、血液の中の赤血球が壊されるため、その残骸 が、黄疸(体表の粘膜が黄色っぽくなる)、血色素尿(赤い色の尿)として現れます。死亡率は高いです。

診断は、血液中や尿中にレプトスピラが発見されることで確定診断が出来ます。
治療は、細菌であるレプトスピラを殺すための、抗生物質の投与が主です。また、赤血球が壊されれば輸血をし、嘔 吐や下痢が激しければ脱水や栄養失調を防ぐために輸液をするなど、対症療法が必要です。

予防として最も効果的なのは、混合ワクチンの接種です。さらに、他の犬のおしっこを舐めさせない、水たまりの水を飲ませない、電柱にかかった他の犬のおしっこの匂いを嗅がせない、など、ちょっとしたしつけで、この致死的な病気を回避することが可能です。


獣医師 斉藤大志 2001.6.6

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