犬の拡張型心筋症とは心臓を動かす心筋の異常により心臓の収縮力が低下する病気です。収縮力が低下すると全身へ送られる血液量が減少し心臓内に血液が貯まることによって心臓が拡張し、見た目では心臓肥大が起こります。
【原因】
ほとんどが純血種に発症し、遺伝性要因が強く疑われていますがはっきり解明はされていません。特にドーベルマン・ピンシャー、ボクサー、セントバーナード、グレートデン、アイリッシュ・ウルフハウンドなどの大型犬が多く、コッカースパニエルなどのスパニエル種にも発症することが知られています。(アメリカでの報告ですので犬種が特徴的ですね)
若齢〜中齢(4〜6歳が多い)で発症が多く、雌より雄で良く見られます。
最近、L−カルニチン(アミノ酸の一種で脂肪の代謝に関与)を補給すると改善することか分かりL−カルニチンの欠乏ではないかとの報告もあります。
特にコッカースパニエルでは、タウリンとL−カルニチンの欠乏が原因であるといわれています。
【症状】
初期には無症状が多く徐々に進行し、・元気がない ・食欲がない ・疲れやすくなる ・咳をする、から始まり、末期には呼吸困難、失神がみられ、突然死する場合もあります。
【診断】
聴診等の身体検査から、レントゲン検査、心電図検査、心臓の超音波検査、場合によっては血液検査、心音図検査を行って総合的に診断します。特に超音波検査は有効です。
【治療】
強心剤、利尿剤、血管拡張薬などの内服で治療します。
また、生活においては食事の問題と運動制限があります。食事は塩分の制限、ビタミンB群の補給、また、上記のタウリン、L−カルニチンの摂取(人の研究では効果が示されている)を考えた食事を与えることが必要になります。そのため市販のフードや手作りの食事よりも病院の処方食のほうが勧められます。
運動の制限は絶対ですが、肥満は心臓に負担をかけるので適度な運動は必要です。
【予後】
基本的に完治は望めない病気で投薬ですのでQOLを保ちながら、進行を遅らせることになります。そのため早期の治療が望まれます。また、投薬によって安定しているように見えても、突然悪化することもありますので常に注意が必要です。
獣医師 林孝直 2003.12.9 |