第九章:ワンちゃんと一緒にいられる職業
9-1:獣医師になるには

登場人物

尚子(27):有名会社のキャリア・ウーマン。だったが、この度、
       会社が倒産し、晴れて(?)無職に。
       現在、再就職先を求めて、就職マガジンとにらめっこの日々を送る。


 会社の倒産のせいで職を失った尚子は、手に職をつけることの重要性を痛感していた。そのため、就職マガジンを見る目も、自然と技術職の方に向かっていった。ちなみに作者は、獣医師を志す前、鎌倉に行って和菓子職人になるのが夢であった。懐かしいなぁ〜、あの頃(…?)。

尚子「やっぱり職人とかの方が、食いっぱぐれがなくていいわよネ…。でも、その分、勉強も大変か〜。あっ、これなんかいいわネ。
尼さん募集。経験不問。資格なくてもいいのかしら?結構憧れちゃうわよネ…。南の海で素潜りでサザエとか採っちゃってさ…。若い人でやってる人も少ないだろうから、意外にモテちゃったりもして。…よし、ちょっと電話してみよ。」
おいおい、なんか勘違いしていやしませんか?

RRRRRRRRR
電話の相手「はい、○△寺ですが。」
尚子   「もしもし、就職マガジンを拝見して、お電話差し上げたんですが。そちらでアワビ採ってみたいんですけど。」
電話の相手「は?」
尚子   「ですから、アマさんになりたいんです。水泳は犬かきしかできないけど。練習しますよ。」
電話の相手「あの…ウチは海女さんではなく、尼さんを募集しているのですが。」
尚子   「え?アマチュアがダメってことですか?でも経験不問って…」
電話の相手「いや、ですから…」

※だからネ、オチはネ、アマさん違いだってことよ。どうでもいいんだけどネ。

さて今回は、「なるには」シリーズの第一回。獣医療に携わる、
獣医師になるにはどうすればよいかを紹介しましょう。今までの章では、ワンちゃんの飼い方がメインだったが、この章は、大好きなワンちゃんと一生一緒に暮らしていくには、どうすればいいかを紹介していく。

 まずは、獣医師になるには。これに関しては、方法は一通りしかない。全国に数カ所ある、獣医学部を持った大学を卒業して、獣医師国家試験に合格する。これだけである。(最近は海外の獣医大を卒業する人も出てきた。そういう人は農水省での予備試験をパスしてから正式に日本の獣医師国家試験を受けなければならない)
司法試験などは、現在の所、法学部を出なければならない、といった決まりはなく、例えば、専門学校や通信教育で勉強して、最終的に司法試験に合格すれば良いのだが、獣医師は別である。医者と同じ、6年制(結構、これが知られていない)の獣医学部を卒業することが、受験資格となるのである。
 では、大学では、どのようなお勉強をするか?これは、結構シビアである。動物が大好き、というだけで獣医学部に入ってきた人は、実習でいきなり打ちのめされる。そう、動物実験(言葉悪いネ)である。動物を用いた実習ができるのは、獣医師の特権であるため、その技術を身につけるため、どこの大学でも、誰でも、絶対に通らなければならない道なのである。これが嫌で、辞めていく人もいると聞く(作者の知り合いにはいなかったが)。しかし、これは仕方のないことなのかもしれない。動物実習をすることで、よりたくさんの動物を救うことができるかもしれないのである。動物実習を肯定する訳ではないが、どこかで割り切って、というか、自分で無理矢理納得して、実習していたのを覚えている。一応、現実を伝えるため、どのような実習があるかというと、ワンちゃんを使っての手術実習(最終的には安楽死させる)、マウスなどを使っての実験の実習(大抵、実験後は安楽死)、各種動物(馬、牛、豚、犬、鶏など)の解剖実習、麻酔実習、実際に大学病院の診察を見学する病院実習などなど。
こんな柄だけど…僕は牛じゃないよ
あとは、これは楽しい牧場実習。各大学で内容も色々あると思うが、一日中、羊とか豚とかを眺めている行動学の実習や、羊の毛刈り、牛乳搾り、馬・牛のエサやりなどなど。あと有名なのが、「直検」こと、牛の直腸検査の実習である。メスの牛のお尻に腕を突っ込んで(もちろん手袋付き。女の子は腕が短いから肩まで入ることも。)、お腹の中を直接触って検査する技術を磨く。犬猫を扱うだけが獣医師ではないので、大学では、馬・牛などの大動物にも触らないといけないのである。肛門と陰部を間違えられた牛も獣医大には多数いるらしい。
 そのような実習の他、キチンと教室で授業を聞いたり、研究室に入って自分の研究を進めて卒業論文を書いて、卒業できたら、次は、獣医師国家試験である。
 獣医師資格は、農林水産相が認める国家資格であり、キチンと大学を卒業できて初めて、受験することができる。その試験対策は、各獣医大学の学生が協力し合い、過去の資料を集め(先輩から代々譲り受けるものもある)、その年の出題傾向を予測したり、まとめの冊子を作って、各大学に提供し合ったり(もちろん有料)、試験の直前までメールなどで情報をやり取りする。そして、試験にのぞむ訳だが、昔は筆記+実技があった。例えば、犬を見せられて、避妊手術の時はどこをどのように切るか、などが聞かれたらしい。だが、今は全て筆記であり、しかもマークシートの選択問題である(2000年のはそうだった)。
ここからがスタートです
 で、晴れて、その試験に合格すると、獣医師の資格を手に入れることができる。 ただ、その資格を手にしたら、皆が動物病院の先生になるかというとそうではない。製薬会社に就職する人もいれば、公務員になって農林水産省や地方の獣医職に就く人もいる。大学に残って研究を続ける人もいれば、大動物、小動物のお医者さんになる人もいる。
  では、どのように動物病院の獣医師として修業していくか?獣医師は、人間の医師と違い、「インターン」という制度がない。
インターンとは、医学生が、大学卒業後に課せられる病院実習のことであり、今は、医学生だけでなく、実習関係ではよく使用される言葉である。これがないので、動物病院に就職する時、新人は、全くのド素人であることが多い。大学で、ある程度、基礎は教え込まれているが、実際に使える知識、応用に関しては未熟である。なので、その後、どう伸びていくかは、就職先の動物病院の院長の実力に左右される。あとは、自主的に参加する卒後セミナー、勉強会で、ドンドン新しい知識を身につけていくしかない。
一国一城の主…大変です
 現在、動物病院は全国に数多く存在し、一時期は、ペットの増加以上に動物病院が増加していたものだが、さすがにヤバい病院は淘汰され始めてきた。獣医師なら一度は開業(自分の病院を持つ)してみたいものだが、金もかかるし(現実的な話…)、周りの動物病院との競争も激しい。なので、これからは、大きい病院で勤務医として働く獣医師が増えていくかもしれない。 開業しないで、勤務医を続けていく場合、かなりの実力がないと、そんなには給料も上がらない(すいません、院長…。グチじゃないっスよ)。なので、余程の覚悟、また、これは当たり前のことだが、動物を救いたいと思う気持ち、動物への強い愛情がなければ、この仕事は続かないと思うし、飼い主様から見ても、そういう気持ちのない先生には診てもらいたくないですよネ。


教訓:
一、儲からなくても(しつこい?)、動物を救いたいという気持ちがあれば大丈夫!!獣医師にはむいてます!!
二、体力はもちろん知力も必要なんですよ。


次回は、獣医師以外の動物病院のスタッフになるには、です。お楽しみに。次は、尚子は何を目指すんでしょうか…。


獣医師:斉藤大志



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