第八章:ワンちゃんに関する法律
8-2:動物愛護法について

登場人物
知香(21):第二章に登場した智子の友人のトリマーさん。
      定期的に東京に出かけ、トリマーの修行をしているという、
      格好いい一面もあるが、新宿に行くと人混みに酔ってしまうという、
      カントリー娘な一面も持つ。
聖子(21):知香の友人のトリマーさん。
      知香とは高校の時からの友人だが、常に知香にライバル視される、
      優等生的な女の子。


進んでやってんなら…いいけどサ
 で、前回の続きである。 二人が目撃したのは、一人の男が、路上でハスキーに芸をさせようとしている現場であった。男は、ハスキーに玉乗りをさせようとしていたが、ハスキーは、全く見向きもせず、男に向かってハッハッといいながら、腰を振っていた。逆上した男は、ハスキーに、えぐるようなボディ・ブローをかまし(ハスキー、ビクともせず)、ついには、その場に鎖で縛り付け、置き去りにしようとしていた。

知香「あー!!慎也だー(第一章の第二回を参照)!!あんた、何やってんのよ、こんな所で。」
聖子「知香、知ってるの?この人。」
知香「うん。友達のルーム・メイトの元彼の友達(遠いよ!!)。あんた、そんなことしてると法に触れるわよ。」
慎也「うるせーなー。オレんチの犬なんだから、何したっていいだろ?」
聖子「法律じゃーねー、動物の習性を考慮して適正に取り扱うこと、動物をみだりに傷つけないこと、動物を遺棄(置き去り)しないこと、って決まってんだからネ。全部合わせたら、どれだけの罪になると思ってんの?」
知香「合わせ技一本で、終身刑だネ(そこまではいかないけど…)。さよーならー。」
慎也「ぐ…。だったらオレだって、習字とそろばんと漢字検定合わせたら、全部で13級なんだからなー。」
聖子「…何それ?関係ないじゃん。しかも、自慢にならない…よネ?」

※うん、ならない。段じゃなくて級だからネ。少ない方がスゴいんだからネ。しかも文化系だからネ(意味なし)。で、慎也がどれ程の罪に問われるかは、次回に乞う御期待!!ということで、今回は、聖子の裁きの元となった、動物愛護法の内容に関してである。全部紹介していると大変だし、つまらないので、重要なところだけピック・アップしていきましょう。

 まず、動物愛護法という名前に関してだが、正式名称は、「動物の愛護及び管理に関する法律」という。この法律、2000年12月1日に改正法として施行されるまでは、「愛護」ではなく、「保護」という言葉を使っていた。
別にどっちでも同じじゃん?と思われるかもしれないが、その辺はやはり、偉い人達の、マリアナ海溝よりも深い考えがあるらしい。「保護」だと、直接、動物を取り扱うこと、というイメージが強いため、動物と直接かかわりを持つ持たないに限らず、広く国民にこの法律を知ってもらいたい、という考えから、より一般的で馴染みやすい、「愛護」という言葉を使ったそうな…。うん、深いネ、確かに。

 次に、この法律の目的だが、大きく分けて二つある。一つは、動物虐待の防止や動物を正しく飼うこと、その他動物の愛護に関することを法律として定めることで、動物を愛することは大切なんだよ、という精神を国民の中につくりあげ、さらに、それが基礎となって、生命の大切さを学び、人間が皆仲良くなって、最終
危害…加えそう…
的には、平和に暮らせますように、ってな熱い想いが込められている。
もう一つは、正しい動物の飼い方を定めることで、人間の知識不足からくる、動物が人間に及ぼす被害をなくそうとすることである。例えば、ワンちゃんを庭にもつながずに放し飼いにして、そのワンちゃんが他の人をかんじゃった(被害その1)とか、そこら辺でゴミを散らかした(被害その2)とか、いきなり道路に飛び出したら、それをよけようとした車がガソリンスタンドに突っ込んで大事故になった(被害その3)とか…。これらの被害は、飼い主様が、「ワンちゃんは放し飼いにしちゃダメ」という正しい飼い方を知っていれば防げたものであり、その被害を被るのは全て人間なのである。こういった、「動物→人間」の被害を防止する、という目的も、この法律には込められている。


 次は、動物を取り扱う上での基本原則だが、これに関しても二つある。一つは、動物だって、一つの命あるものなのだから、みだりに殺したり、傷つけたり、ボディ・ブローをかましたり(これは載ってない)、苦しめたりしてはならない。今さら言われるまでもないけどネ。
ちなみに、現在の日本の法律では、全てが「人」か「物」かによって分けられる。動物は「人」ではないので、当然、「物」として扱われる。だから、動物を殺したり、傷つけたりした場合、「器物損壊罪」が適用されることが多い。でも、これは、動物を「ただの物」扱いしているからではなく、
ワンちゃんから見たら…これも虐待?
「動物虐待罪」のほうが刑罰としてはどうしても軽くなってしまうため、重罪にするには、あえて動物を「物」扱いした方がよいから、と考えられる。

もう一つの原則は、動物の習性を考えて、正しく取り扱う、ということである。例えば、昔いた「ナメ猫」、覚えてます?(若い人は知らないでしょう…)。あれだって、猫ちゃんにグラサンかけて、長ラン着せて、竹刀持たせて、後ろ足だけで立たせてたでしょ?猫ちゃんは本来、四足歩行なのに…。あーゆーことはあまり好ましいことではありません。
ただ、これらもやっぱり程度の問題なんですネ。だって、動物が人間に危害を加えそうな時や(熊に襲われたとか)、動物を訓練する時、食べるために動物を殺す時は、「みだりに」虐待したことにはならないけど、「必要以上に」苦しみを与えた時や、動物の習性に「著しく」反する訓練をしようとした時は罰せられるんですから。その辺の線引きは難しいですよネ。

 また、面白いのが、「動物愛護週間」である。皆さん、これ法律で定められてるって、知ってました?9月
3月じゃ…まだ寒いわな〜
20日から9月26日までなんですよ。ホニャララ週間とかナンチャラ月間とかは色々あるが、動物愛護週間のように法律で明確に定められた週間は、他には見当たらないので、マメ知識として覚えておくといいかも。
ちなみに、なんでこの時期なのかというと、最初は、戦後、GHQ(連合国軍総司令部。詳しくは…マンガ日本の歴史とかを見て下さいな…学生時代の教科書でもいいかっ)から、春分の日辺りにしなさい、という命令があったが(なんでだろ?)、その頃だと北国はまだ雪が残っているから、昭和29年から、全く逆の秋分の日辺りになったんだって。ちょっと安易だネ〜。

 続いて、この法律の下に位置する「基準」の紹介。どんなものがあるかというと、「犬及びねこの飼養及び保管に関する基準」「展示動物等の飼養及び保管に関する基準」以下同様に「産業動物の〜」「実験動物の〜」と続く。これら「基準」とは何かというと、動物愛護法に基づいて定められた、行政指導上の目安であり、法的な拘束力はない。動物愛護法は拘束力あるよ、法律だから。法律は違反すると罰せられるが、基準の場合は、ただちに罰せられることはない。ただし、それらの基準を元にして、地方公共団体が条例を定めたりするので、それによって罰せられることはある。なんか難しいネ。ただ、犬及びねこのものは、結構身近な問題が多いので、次回、紹介しましょー。

 お次は、犬及び猫の引き取りに関してである(法律に載っているのは犬猫だけ!!ほかはダメよ)。こんなことも法律で決まってるんですネー。これは、所有者のはっきりしない(ここがポイント)犬や猫を拾ったら(要は野良ちゃん)、都道府県や市区町村に言えば、引き取ってくれる、というもの。ただし、場所によって、手数料をとられる所があったり、その額がまちまちだったりするので、自分の住んでいる所の役所に問い合わせてみたほうがよい。このように都道府県等に引き取られた場合、飼い主探しや里親探しは積極的に行われる義務があるが、ダメだったら、研究機関などへ行くか、安楽死させられてしまう…。
脱走注意!!首輪はしっかりネ
また、もし所有者が分かっている(首輪に書いてある住所とかで)犬や猫を拾ったら、それは遺失物法の「逸走の家畜(逃げた動物)」にあたるので、警察に届け出なければならない。う〜ん、勉強になるネ〜。

 最後に、病気や負傷した動物(これは犬猫限定ではない)及び、動物の死体を見つけた時の、通報措置についてである。これらを、道路や公園などの公共の場所で発見した場合、飼い主が分かっている場合は飼い主へ、分からない場合は都道府県などに通報するよう努力しなければならない。でもネ、引き取った後は、できるだけ里親探しはしてもらえるんだけど、やっぱりハンデがあると厳しい。ので、治療もせずに安楽死というケースが少なくない。都道府県で治療する義務はないので…残念ながら…。
また、動物の死体は、「廃棄物」として処理される。ただし、動物霊園で取り扱われるものは別。あと、へい獣(牛、馬、豚、やぎ、羊の死体)は、死亡獣畜取扱場でないと、埋めたり焼却したりはできないことになっている。ちょっと悲しい、こんなことまで載っている法律なのである。

 ほかにも、犬猫がみだりに繁殖しないように避妊、去勢手術を勧めていたり、動物を殺さなければならない時は、安楽死させる、動物をたくさん飼っている家から出る悪臭やゴミなどに、注意を促せる、など、動物に関するこまかい決まりごとが何個も載っている。
そして、罰則に関しても…でも、これは次回、ということで。


教訓:
一、動物が持っている権利を認識し、動物を正しく扱うべし!!


次回、慎也に天の裁きが!!…お楽しみに。


獣医師:斉藤大志



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