第四章:ワンちゃんの成長日記
4-4:性行動が出てきた!!

登場人物
恵子(19):第一章の登場人物。拓也と半同棲していたが、
      愛想をつかせて、アパートを出た(スゴい展開!!)。
      現在、智子とルーム・メイトとして同居中。
      カリスマ・トリマーを目指し、現在、
      専門学校とバイトで、忙しい日々を送っている。
智子(23):第二章の登場人物。長崎から上京したOL一年生。
      ワンちゃんと思って拾った動物が、実は猫ちゃんだったという、
      ちょっとお間抜けなコ。現在、その猫(小志)&恵子と同居中。


前回、小志の愛情あふれる(?)パンチのおかげで、無事、
友情出演 斉藤 顔デカ 小志
全ての歯が生えかわった野良ダックスも、すでに8ヶ月齢になり、早くも成犬サイズを遥かに越えた、巨大な「ダッグズ」にまで成長を遂げていた(当院では、標準サイズよりかなり大きいワンちゃんは、濁点を付けて呼ばれるのだ!!ヨーギーとかネ)。

 そんなある日、恵子がトリミングの練習台として、野良ダックスの肛門腺しぼりをしていた時、突然、事件は起きた。なんか前回と同じ感じだが、恵子が動くと何かが起るのよ…。ちなみに肛門腺とは、肛門の両脇にある、悪臭を放つ一対の分泌腺である。正しい肛門腺絞りのコツは、どうぶつお手入れマニュアルを参照のこと。

 恵子「この子も大きくなったわネー。これじゃぁ、千暁(恵子の友達のトリマーさん)の家のダックスと変わんないじゃない。」
 智子「そうよネー。ん…キャーーー、恵子、それ、血、血、血…。」

汚い!!って避けてないで、
ちゃんとお尻もお手入れしてネ
 智子の指差す方向には、お尻からダラダラと血を流しているにもかかわらず、ニヘラ〜っと笑っているダッグズの姿があった。)

 恵子「え?あー、これ?この子、ヒート(発情)が始まったんじゃないの?ワンちゃんの生理。この子もやっと大人の仲間入りネ…お赤飯炊かなきゃ(しみじみ)。」
 智子「え…だってこの子、男の子でしょ?この前、私の足にしがみついて、腰、カクカク振ってたわよ。恵子、肛門腺破裂させたんじゃないのーっ!?」
 恵子「あんたネ…何ヶ月、この子と一緒にいるのよ。チンチンついてないでしょうが、この子。そんなことだから、犬と思って、小志を拾ってきたりすんのよ。」
 智子「ぐ…(絶句)。ぐうの音も出ないわ。」
 恵子「出てんじゃん。」
 智子「…う・る・さ・い。」

 ※またまたやっちゃってる智子さんですが…女の子のワンちゃんでも、中には腰を振る子もいるのである。これは性行動の一種で雄も雌もこの行動をやることがある。やはりワンちゃんの性別を見分ける上で重要なのは、チンチンである。これが一番確実。生まれた直後でも分かりますからネ。
 ところで本題であるが、今回は性成熟に関して、である。男の子のワンちゃんの場合、7〜8ヶ月齢で性成熟に達し(子供を作れるぞ、ってこと)、それ以降はいつも発情している(いや〜ネ、男って…私?)。正確には、発情という言葉はメスの動物にだけ用いる言葉なので、「いつも興奮している」が正しい、かな?それだと馬鹿みたいなので、「いつでも子供を作れる状態にある」としよう(あまり変わらない…)。女の子のワンちゃんの場合、6〜14ヶ月齢で性成熟に達する。発育の
ワンちゃんの1歳は人間の18歳位…

良いものでは、4ヶ月齢で発情した例もあるらしい(おませさん)。性成熟の到来は、一般的に小型犬種で早く、大型犬種で遅い傾向にある。また、野犬は飼い犬より早く、温暖地方にいる犬は寒冷地方にいる犬より早いと言われる。発情が来るのは、小型犬では5〜7ヶ月間隔の年二回が普通であるが、大型犬では8〜12ヶ月間隔なので、年一回の場合もある。まぁ、これらは平均なので、皆が皆、これにピッタリ当てはまる訳じゃないけどネ。


 もし子供をとる予定があるのであれば、発育が良ければ、第一回目の発情で交配し、子犬を産ませても差し支えないとも考えられるが、若いお母さんは心理的にまだ幼さを残していて(子供が子供を産んだ状態)、育児の失敗例もままあるので(ママじゃないよ、間間だよ。時々ってこと。)、身体がすっかり充実する2回目以降の発情時に子犬をとるようにした方が良い。もし子犬が欲しくない場合は、早めに避妊手術を行った方が良い。
こんな若い子に、子育ては無理でしょ?
都会では放し飼いの犬も少なくなってきているが、郊外では、メス犬のもとにオス犬が集まり(逆ハーレムですな)、 そして、望まざる子犬が産まれてしまったりすることもある(山梨県もまた然りである…)。避妊手術については、また後の章で取り上げるが、当院でお勧めしているのは、4〜6ヶ月齢での手術である。
 子犬を望むなら、飼い主様は、いつから陰部からの出血が始まったかを、しっかりチェックすべきである。ワンちゃんの発情期は長いので、交配適期を誤ると、受胎しないことがある。ここで、ワンちゃんの性周期について説明しましょう。


(1)発情前期
 発情が近くなると、女の子のワンちゃんは、散歩に連れ出した時に、小刻みにあちこちオシッコするようになる。毛づやも良くなり、一段と美しくなる。発情の開始は、陰部からの出血でそれと気付かれる。しかし、出血量の少ないワンちゃんや、血をすぐになめとってしまうワンちゃんもい
こんなんだったら分かりやすくていいけどネ。

て、見落とされることもあるので、日常のお手入れの時によく観察する必要がある。ワンちゃんの発情出血は、発情前期から発情期にかけて見られ、霊長類(ヒトとかサルとか)の月経に似ているが、基本的に異質なものである。つまり、ワンちゃんの出血は、発情の開始に伴うホルモンの増加に反応して、子宮粘膜の血管系が著しく増殖し、血液がにじみ出てきた結果起こるもので、出血の「後」が交配適期となるのに対し、霊長類の月経は、肥厚した子宮内膜の脱落と共に出血するもので、出血の「前」が交配適期になる。ん〜、勉強になりますネ、難しいけど。また、その出血が全く見られないワンちゃんも中にはいるが、他にも発情前期のサインはある。例えば、外陰部が大きくなり、充血してくる。また、この頃のワンちゃんは、その匂いで、男の子のワンちゃんを寄せつけるが、交配自体は許さない。この発情前期は平均一週間ちょっとだが、大体6〜10日間である。

(2)発情期
 出血ははじめ、鮮やかな赤い色だが、次第にその色もあせ、10日位経つと、ワンちゃんは、お尻の辺りを触られると、尾を横に曲げて男の子を許容する態度を示し始める。この頃が交配適期となり、長さとしては10日位、大体8〜14日位である。発情前期も発情期も、若いワンちゃんでは比較的短くなり、ワンちゃんによって、かなり差が出るものである。排卵は、男の子を許容し始めてから2〜5日の間に起こることが多く、排卵後も発情は続く。ワンちゃんの場合、膣の細胞の状態で、発情前期〜発情期のおおよその期間を知ることが可能なので、交配適期を知りたい飼い主様は、動物病院で、お気軽に、「膣スメア検査して下さい」と、おっしゃって下さいな。これを調べれば確実に子供ができます。(たぶん)
 
(3)発情休止期
 発情出血も止まり、男の子を許容しなくなる時期であり、期間は約2ヶ月である。。この時期に、妊娠していなくても、妊娠に似た徴候を示すワンちゃんがいる。それが偽妊娠である。第一章の4でも触れたが、自分が妊娠していなくても、乳母(うば。お母さんに代わって子供に母乳を飲ませ、育てる女性)になるべく、子宮を肥大させ、乳腺を発達させ、お乳を出せる状態になることがある。

 (4)無発情期
 上記の1〜3以外の時期で、発情と発情の間の時期であり…何もない。期間は4〜8ヶ月である。

 あー、難しかった。…と、ここで振り返ってみると、女の子の話ばかりで、男の子の話がほとんどない。(斉藤先生が書くんだから当然と言えば当然!by院長)ので、ここで男の子のワンちゃんの性行動について少々。男の子のワンちゃんが性成熟すると、凶暴性が増す、いろんな所でオシッコしたがる(縄張りを広げ
おっと失礼…これも性行動よ!!
るため)、あらゆるものに向かって腰をカクカクする(…いやん)など、女の子のワンちゃんよりも、比較的、人間にとって問題となる行動が増える。だから、という訳ではないが、やはり子供をとる気がないのであれば、早めの去勢手術をお勧めしたい。性成熟前に去勢すれば、それらの行動が消失する確率も高くなるので、4〜6ヶ月齢(当院では)、基本的にはたまたまが下りてきたら、なるべく早めに去勢手術をするべきであろう。本当に少々だったネ…。


教訓:
一、女の子の場合、普段から性行動をチェックし、現在の性周期を把握しておくべし!!病気の早期発見にもつながるかもよ。
二、男の子でも、女の子でも、子供をとる予定がないのであれば、早めに避妊・去勢手術を施すべし!!詳しい理由については…待て、次章っ!!


次回からは、ワンちゃんの予防医学になります。お楽しみに!


獣医師:斉藤大志



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