第四章:ワンちゃんの成長日記
4-3:歯が生え換わった!!

登場人物
恵子(19):第一章の登場人物。拓也と半同棲していたが、
      愛想をつかせて、アパートを出た(スゴい展開!!)。
      現在、智子とルーム・メイトとして同居中。
      カリスマ・トリマーを目指し、現在、
      専門学校とバイトで、忙しい日々を送っている。
智子(23):第二章の登場人物。長崎から上京したOL一年生。
      ワンちゃんと思って拾った動物が、実は猫ちゃんだったという、
      ちょっとお間抜けなコ。現在、その猫(小志)&恵子と同居中。


野良ダックスも無事、離乳を終え、すくすくと成長し、早くも4ヶ月齢になろうとしていた。そんなある日、恵子がトリミングの練習台として、野良ダックスのブラッシングをしていた時、突然、事件は起きた…。

 恵子「最近さー、私達、この子(野良ダックス)に構い過ぎかしら?小志、いじけてない?先住者なのにないがしろにされてさー。」
 智子「大丈夫でしょ。犬は人につくけど、猫は家につく、っていうし。あまり構わないほうが、小志はリラックスできるんじゃない?」

 なかなか学がありますネ…。ところが、この小志君、かなりの甘えん坊さんで、かなりの暴れん坊将軍であった。(当院の本物の小志の飼い主も…)野良ダックスのトリミング・シーンを見せつけられ、嫉妬に狂った小志君は(安い昼ドラみたい?)、八つ当たりで野良ダックスへの攻撃に出た。

 野良ダックスも、とばっちりはゴメンとばかりに左ストレートを放ったが、それをかわしつつ、野良ダックスの左手にかぶせるようにして、小志君の黄金の右が野良ダックスの左頬にクリティカル・ヒットした。これがいわゆるクロス・カウンターであるっ!!(ちょっと興奮気味)。


 恵子「きゃーーーっ!!こら、ちょっと小志、何すんのよ。あーーーっ!!歯が…歯が折れてるーーーっ!!」
 智子「えーーーっ!!困るじゃんネー(山梨弁…甲州弁である)。上の歯?下の歯?どっち?」
 恵子「え?何で?」
 智子「だって、それが分からないと…上の歯だったら下に向かって生えるように下に投げろっていうじゃない?こんな高い所から(高層マンションらしい)下に投げて、もし歯が人に刺さったら死ぬわよ。過失致死よ。何年くらうのかしら…。」
 恵子「…淳(第三章参照)にでも聞いてみなさいよ。」


 ※こんな歯の生えかわりかたがあるかどうかはしらないが(私は聞いたことございません)、今回の「歯が抜けちゃったよ事件」は、おそらく起こるべくして起こったものである。
こんなイタズラも日常茶飯事…
なぜなら、この4ヶ月齢という時期は、ちょうど、乳歯が永久歯に生えかわる時期なのである。たいていは4〜5ヶ月齢で生えかわるが、若干、個体によって差はある。この時期、先のとがった乳歯の横から、少しずつ、先の少し丸みがかった永久歯が生えてきて、それと同時に乳歯が少しずつ抜けていく。その際の歯のむずがゆさから、結構、この時期にかみ癖がひどくなる子がいるが、これはしつけではなかなか矯正できないので、むしろ何かおもちゃなどを与えて、気の済むまでかみかみさせてあげたほうが良い。

 しかし、この時期を過ぎても、乳歯が抜けることなく残っていて、見た目、サメのような歯になっている子
おクチ、くちゃ〜い!!
がいる。これは乳歯遺残(残存)という、立派な病気である。まぁ、そのまま放っておいても、今すぐどうこうなる訳ではないが、やはり、抜けるはずのものが抜けていないので、弊害はある。永久歯がちゃんとした方向に生えないとか、そこだけ歯の構造が複雑になるので、歯石が付着しやすくなる、などである。この場合、残った乳歯は抜いてあげたほうが良いが、そのためだけに全身麻酔をかけるのはちょっと…と思われる方も多いでしょう。局所麻酔はワンちゃんには通用しないし(暴れるからむしろ危険)。そこでお勧めなのは、避妊・去勢手術の時に一緒に抜いてしまうことである。そうすれば、何回も麻酔をかける必要はなくなるし。結構、当院でもそうされる飼い主様は多いですよ。


 歯の病気は、ワンちゃんではよく起こるものであり、一番多いのが歯石の沈着である。歯石は、それ自体が刺激、細菌の感染源になり、歯肉(歯茎)に炎症を起こす。
お手入れマニュアルへGo!!
ひどい時には、歯の根っこまで炎症・化膿が進み、あごの骨を溶かし、鼻にまで炎症が波及し、慢性の鼻炎、顔面の変型などが見られるようになる。「ただの鼻炎なのに、獣医さんが口の中まで診るのはなぜ?」と思われた経験のある飼い主様も多いかもしれませんが、こういう理由があるのである。だから、こうなる前に、日頃からワンちゃんの歯のお手入れをする必要がある。缶詰めの食事よりも固いドライ・フードのほうが、比較的歯石がつきにくい(結局歯石がつきやすい要因は口腔内のPHの問題なので)ので、そのようなフードを選択するのも一つだし(第七章 ワンちゃんのお食事で詳細に)、毎日歯みがきしてあげるのも良い(どうぶつのお手入れマニュアル 第一回参照)。

 ここで、4-2でもやったが、今度は永久歯の歯式についても触れときましょ。乳歯の時は、
 I C P M
 3 1 3 ×
 3 1 3 ×
で、計28本だったが、永久歯ともなると、最後方の臼歯(大臼歯ともいう)も生えてきて、
 I C P M
 3 1 4 2
 3 1 4 3
となり、計42本まで増える。ただし、小型犬の場合は、あごの大きさが小さいので、完全な本数、歯が生えないこともしばしばある。そういうのを見ても、「ウチの子、成長が悪いのかしら…」などとお悩みになりませぬよう…。鋭い歯も、1年経つと下あごの門歯がすり減り始め、5年経つと犬歯が衰え、7年目には下あごの門歯がすり減って丸みを帯び、10年経つと上あごの門歯も減ってくる。なので、歯の摩滅の具合から、おおよその年齢を推定できる。まぁ、食生活によってかなりバラつきはあるけどネ。おおよそ、の話です。

教訓:
一、ワンちゃんも永久歯は一生もの。抜けたらもう生えてはこないので、お手入れをしっかりやって、健康な歯を保つべし!!
二、歯磨きをするなら、子犬の頃(生後2ヶ月)からその習慣をつけるべし!!大きくなってからいきなりやろうとしても、たいてい嫌がってできませんぞ。


次回は、ワンちゃんの性行動について。お困りの方も多いでしょう…。


獣医師:斉藤大志



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