第三章:ワンちゃんを家に迎え入れるには
3-4:同居の動物がいたらどうしますか?


登場人物

淳 (29):サラリーマンをしつつ、弁護士を目指して勉強し、
      司法試験突破を狙う熱血漢。
      実家において、ブリーダーにだまされて購入した、
      6ヶ月齢なのにもう成犬サイズの、
      ちょっと怪しい、でかいヨークシャー・テリア、
     「ヨーギー」を飼っていることがトラウマになっている。
清美(25):淳の奥さん。ワンちゃんの飼育経験はないが、
      淳が仕事と勉強に忙しく、構ってくれないため、
      本物の「ヨーキー」を飼うことにした。



 夏真っ盛り(この原稿を書いている時はネ)!!ということで、二人は久し振りに、淳の実家に帰省することにした。家族の一員となったヨーキーちゃん(結局最後まで名前なし)も一緒ということで、清美はルンルン(死語?)だが、淳はこのカンカン照りの中、なぜか青ざめた顔をしている。これから起こる恐怖の惨劇を予想しているかのように…。

 ガラガラガラ(←淳の実家のドアを開ける音。)
やっぱBGMは「ゴジラ」かな…
 清美「こんにちはー。お久し振りで…キャーーーーーーッ!!」
 淳 「危ないぞ、清美!!下がってろ。早くも出やがったな、化け物め。」
 キシャーーーッ!!ガフッガフッ!!ビローン(!?)

 清美「何、何なの、この犬。えっ、犬…よネ?違うの?」
 淳 「これが我が家のヨーギーだよ。」
 清美「えっ!!これが噂の…あれっ?ウチのワンちゃんは?どこ?」
 淳 「もうヨーギーの腹の中だろ…。」
 清美「えーーーーっ!!いやーーーーっ!!ウソーーーーッ!!」
 淳 「…ウソ。そんな、妖怪じゃないんだからさ。」

※…ごもっとも。さすがのヨーギーも、ただガタイがいいだけで、普通のヨーキーである。ワンちゃんも動物なので、成長期の栄養の良い悪いで、体格は様々である。ちなみにヨークシャー・テリアのスタンダードは、JKC(ジャパン・ケンネル・クラブ)によると、男の子も女の子も、体重3kg以下で、理想は2kg、だそうである。ヨーギーは…否、あえて触れるまい。淳のためにも。
 ここで、せっかくなので、ワンちゃんの体格についての豆知識を少々。
・去勢・避妊する年齢によって、体格が変化するか?→答えはNo。
 よく、若いうちに去勢・避妊の手術を行うと、小さい子に育つ、と言われるが、そのような科学的なデータは今のところないようである。確かに、性成熟する6〜8ヶ月齢(大型犬はもっと後)以前に手術を行うと、その先、性行動が出ないとか、性格が大人しくなるとかはあるが(ない子もいる)、体格にはあまり影響しないようである。経験上、顔付きは変化するようだが。



・去勢・避妊すると太る?→場合によってはYes。
 これを経験されている飼い主様は多いと思われる。ただし、手術すると必ず太るという訳ではない。なんか性ホルモンがどうたらで太るのかな、と思われるかもしれないが、そのようなことに科学的根拠はないのである。ではなぜ、太るケースが多いのか?それは、去勢・避妊の手術を行うと、行動範囲が狭くなるからである。当然、運動量が減り、消費するカロリーも少なくなる。にもかかわらず、手術前と同じ量のごはんをあげていたら…当然、カロリー過剰→おデブっちょ、となる。なので、去勢・避妊手術後の体重を気にされる方は、少しカロリーの低い物を与えるのがポイントである。よく、”ライト”という種類のフードがあるがあれである。(ちなみに肥満している子にはライトでの減量は難しいですよ)他の方法としてはごはんの量を減らす方法である。いきなり量を減らしてしまうと、ワンちゃんがイジけちゃうので、少しずつ量を減らすのであるがせいぜい今までの1割減が限度である。
また、「メチャクチャ運動させればいいんじゃん?」と思われるかもしれないが、ワンちゃんの場合、減量法のメインはダイエット、いわゆる食餌療法であり、運動量を増やしても、あまり体重は変わらないのである。だから、無意味にワンちゃんに腕立てとか腹筋をさせないようにして下さい。そんなこと、誰もしませんネ、はい。


 
 毎度のことながら前置きが長くなりましたが…今回は、新しいワンちゃんを家に迎え入れる際、すでに他の動物がいたらどうするか、というお話。
 すでに他のワンちゃんがいた場合、重要な点が二つある。一つは、どうやって御対面するか、である。いきなり同じ部屋に入れたりすると、それこそヨーギーのように、食ったり食われたりの大惨事になる可能性がある(いや、ない)。そこまではいかずとも、大げんかになる可能性が高い。だから、最初は違うお部屋に入れておいて、まずは新顔のワンちゃんを家に慣れさせてあげる。その後、少しずつ、古株のワンちゃんを近付けるようにする。最初はサークル越しが望ましい。最初はお互い警戒するだろうし、いきなり吠え合うかもしれない。だから、顔合わせの時間も、最初は短くて良い。で、少しずつ時間を長くしていく。今日は5分、明日は10分というように。そしてサークル越しで慣れたと思ったら、サークルを取ってみる。それでケンカするなら、また最初から。あせらずあせらずが重要である。
カウント・スリー!!



 もう一つは、どっちのワンちゃんを上の順位にするか、である。よくありがちなのが、古株のワンちゃんをないがしろにして、新顔のワンちゃんばかりをかわいがることである。これはいけない。古株のワンちゃん、イジけて家出しますよ。いや、そうじゃなくて。古株のワンちゃんの方が、どんなに体格的に小さくても、どんなに年齢的に若くても、順位は古株のワンちゃんを上にすべきである。かわいがるのも古株ワンちゃんが先、で、時間も長め。ごはんをあげる時も、古株ワンちゃんが先。新顔ワンちゃんはその後、といった具合にする。
人間の兄弟を叱る感覚でどうしても年上を叱りがちになるが、勉強してきたように犬は群れをなす動物。群れの順位は、犬の生命線なので気を付けて欲しい。
 あと重要なのが、「他の動物」が赤ちゃんの場合。人間のネ。人間の赤ちゃんもワンちゃんも、お互いに「容赦」とか「手加減」という言葉を知らない。だから、そんな二人を一緒に遊ばせる場合は、大人がよーく監視していないといけない。また、一緒に遊ぶくらいリラックスしていればまだいいが、赤ちゃんがいる所に新しいワンちゃんを連れて来たり、逆に、ワンちゃんがいる所に新しく赤ちゃんが来たり(生まれたり)すると、大抵のワンちゃんは緊張して、食欲不振になってしまうので要注意である。あとは人畜共通、いわゆる人間も動物もかかる可能性のある病気の問題もある。人間の赤ちゃんは、まだまだ免疫力も体力も、おつむもしっかりしていないので、ワンちゃんからカビとかノミとかをうつされたり、ワンちゃんのウンチを触った手で御飯を食べて、回虫や鉤虫などの寄生虫をもらってしまう可能性がある。それを予防するには、大人による監視と、ワンちゃんの健康診断がキーポイントになる。こぼれ話になるが、筆者は小学生の頃、近所の子供に、乾燥したワンちゃんのウンチ(なぜか白かった)を見せて、「カリントウだよ」と言って食べさせようとしたことがあるが、今思えばとんでもない話である。もしその中に寄生虫が潜んでいたら…怖い怖い。ごめんネ、しんちゃん(誰?)。皆さんは絶対に真似しないで下さいネ。
   
これはウ○チじゃないですよ…お食事中の方、申し訳ない。




教訓:
一、同居のワンちゃんがいる場合、顔合わせは慎重に行い、古株ワンちゃんを必ず優先すべし!!
二、人間の赤ちゃんがいる場合、必ず大人の監視の元で一緒に遊ばせるべし!!


次回からは、ワンちゃんの成長日記になります。人間よりも、ずっとずっと速く成長するんですよ。


獣医師:斉藤大志



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