第三章:ワンちゃんを家に迎え入れるには
3-3:ご飯はどうしますか?



登場人物
 淳 (29):サラリーマンをしつつ、弁護士を目指して勉強し、
       司法試験突破を狙う熱血漢。
       実家において、ブリーダーにだまされて購入した、
       6ヶ月齢なのにもう成犬サイズの、
       ちょっと怪しい、でかいヨークシャー・テリア、
       「ヨーギー」を飼っていることがトラウマになっている。
 清美(25):淳の奥さん。ワンちゃんの飼育経験はないが、
       淳が仕事と勉強に忙しく、構ってくれないため、
       本物の「ヨーキー」を飼うことにした。



 ヨーキーを飼い始めてから数日経ったある日、突然、ヨーキーが水のようなウンチをするようになった。「フードは、ペット・ショップで渡された物をそのままやっているだけなのに…」。疑問に思った清美は、真っ先に淳を疑い、問いただした。
 清美「あなた、この子に変な物、あげてないでしょうネ?」
 淳 「変な物ってどんな物だよ?」
 清美「テンプラとアイスとか、ウナギと梅干しとか…。」
 淳 「そんな食い合わせ悪い物、あげるかよ!!酢豚はあげたけど…。」
 清美「じゃぁ、大丈夫ネ…。なんで下痢すんだろ?」

※って、おい!!酢豚ってタマネギ入ってるじゃん。中毒になったらどーすんのよ(医療情報「タマネギ中毒」参照)。それよりも何よりも、人間の食べ物をワンちゃんに与えてはいけない。なぜなら、メチャクチャ味が濃いからである。糖分も高いし、塩分も高いし…良いとこなしである。確かにそーゆーごはんのほうが、ワンちゃんの受けもいい。基本的にワンちゃんは、甘味(糖分。エネルギーの元。)や塩味(ミネラル。生きていく上で必要。)を好み、酸味(腐敗しているもの)や苦味(毒物)を避ける習性がある。これは野生の頃から脈々と受け継がれてきた、生きるための術なのである。だから、甘味や塩味の濃いものは、ワンちゃんも好きなのだが、人間の食べ物はそれが極端なのである。ワンちゃんの缶詰めフードなどを食べたことのある人(?)なら分かると思うが(私はある)、結構、あっさり味、というか味気ない。(味がない)

ワンちゃんにとっては、不満の出ない味なのである。そんな子達が人間の食べ物を食べたら…美味しいから食い付きは良いが、糖分が高いから肥満になるし、塩分が高いからそのうち心臓や腎臓を痛めることになりかねない。何気なく余り物のお米やパンをあげている飼い主様も多いかと
歯のお手入マニュアルを見てネ!!
思うが、米は糖分が高いし、パンは糖分・塩分共に高いので、できるだけ避けた方が良い。昔はそれでじゅうぶん長生きした!という飼い主様、甘い甘い!この食事では確かに10年程度は生きられる。でも今は20年が寿命ですから。あと、人間の食べる物は軟らかい、というのも悪い点の一つである。軟らかいとそれだけ歯に残りやすいので、歯垢の元になる。そして場合によっては歯石にも進行するのである。

また、先にも触れたタマネギ中毒は、結構知られていることなので、酢豚みたいに、あからさまにタマネギな料理を食べさせる飼い主様は少ないと思うが、ハンバーグなど、パッと見、タマネギっぽくないものは、何の気なしに食べさせてしまっている可能性があるので注意したい。(成分自体ダメなんです)
 前置きが長くなったが、ここでは、家に迎え入れたワンちゃんの食餌管理についてお勉強しましょう。ワンちゃんの生活環境が変化すると、それだけでストレスを感じ、下痢を起こしやすい。それに加えて、食事まで今までのものから急に変わったら、さらに下痢を起こしやすくなる。このように、普通食の中でも種類を変更する時や、普通食から療法食に変更する時などは、一気にかえてはいけない、というのが基本である。ワンちゃんのお腹の中の細菌のバランスは、常に一定に保たれていて、現在与えているフードを消化・吸収するのに最適な状態に整えられている。そこにいきなり違うフードが入ってくると、「なんだ、なんだ、このフードは?見たことないぞ。どーやって消化するんだ?」と細菌がパニックになって(そんな思考能力はないけどネ)、結局、うまく分解できず、下痢を起こしてしまう。だから、ワンちゃんを迎え入れる時は、食事は元の家で与えていた献立をあらかじめ聞いてきておいて、はじめはその通りにして与え、少しずつ自分の家庭のやり方に変えていくのが良い。普通食から療法食に変える時も同じ。初めは、普通食に何粒か療法食を入れる程度にし、ウンチの状態を見ながら、少しずつ療法食の割合を増やしていき、一週間位かけて、完全に療法食にすればよい。


また、 「ペット・ショップで勧められたから」、「ブリーダーさんの所であげてたフードだから」ということで、ずーっと同じフードを選択される飼い主様がいらっしゃいますが、これも間違いのことがある。詳しくはフードの章で触れるが、ワンちゃんのフードは、年齢によっても、体格(おデブか、ヤセっぽちか)によっても異なるし、同じような内容でも、嗜好性(おいしさ)重視か、栄養バランス重視かで、かなり内容も、価格も違ってくる。その辺りは、お財布やワンちゃんと相談してから決めて下さいな。重要なのは、勧められたものが必ずしもベストではないので、自分で勉強して、ワンちゃんに合ったものを選ぶ、ということである。
いっぱいあるから迷うけどネ

最後に、重要なアイテムについて触れておこう。それは食器である。今や食器の種類も豊富にあるが、やはり素材はステンレスが最も望ましい。なぜなら、壊れにくい、汚れが落ちやすい、変形しにくい、の3点セットがそろっているからである。言うなれば三暗刻であり、ドンドンでハネ満である(余計分かりづらい)。陶器だと壊れやすいし(ただし小型犬の場合は、壊される心配が少ないので、使用する際の安定感から陶器の方が良い場合もある。ステンレスはカラカラ動くからネ。)、プラスチック製だと、ワンちゃんによってはアレルギー性の皮膚炎を起こすことがある。プラスチックは加工がしやすく、可愛い形のものが数多く出ているのだが、こんな盲点があるので、プラスチックの容器でごはんを食べた後、妙に体をかゆがるワンちゃんは要チェックである(食物アレルギーの可能性もあるけど)。形状は底が安定していて、あまり深くないものが良い。水入れは別に用意しておいて、いつでも(なるべく新鮮な)水が飲めるようにしておく。また、食器や水入れは、汚れたままにしておくと、細菌やカビが繁殖するので、ワンちゃんが食べ終わったら、早めに洗い、清潔にしておかなければならない。自分チの台所では食器からキノコが生えていようが、ワンちゃんの食器はいつも清潔に!!位の気持ちでいないとダメだネ(私のウチのことではない、決して)。


教訓:
一、ごはんは、最初はいままであげてたものをあげ、徐々に、その時のワンちゃんの状態に 合ったフードに切り替えていくべし!!
二、食器はやっぱりステンレスでしょうっ!!


次回、いよいよ、話題のヨーギーとヨーキーが対決する?!。楽しみーっ!!


獣医師:斉藤大志



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