第二章:ワンちゃんの入手方法
2−3:もらう

登場人物
智子(23):OL一年生。長崎から上京し、現在、一人暮らし。
      家族から離れて暮らす寂しさを癒すために、
      生まれて初めて、ワンちゃんを飼おうと検討中。


 ペット・ショップでもブリーダーでも、なかなかお気に入りのワンちゃんが見つからない智子の元に、友達の知香から電話が入った。

知香「智子さー。こいぬ欲しいって言ってたよネ?ウチのいらない?」
智子「知香んチにいるの?欲しい欲しい!!一度見せてよ。」

数日後、知香が、かなりおばあちゃんなシーズーを連れてきた。

知香「実家で10年飼ってたんだけど、私、今度一人暮らしするからさー。
   親は面倒見てくれないし。里親探してたんだよネー。」
智子「こいぬとは言ったけど…小型の犬でなくて、子供の犬よ。」
知香「マジっすか?はははー、聞き間違えちゃったネー。
まー、いーじゃん。「濃い犬」とかじゃなくてさ。
どーする?ロドリゲスとかゴンザレスとかいう名前の、やたらホリが深くて顔の濃い犬、連れて来てたりしたら。Buon giorno(ボン・ジョルノ。イタリア語のこんにちは)とか言っちゃう?」
智子「やっぱりgracias(グラシアス。スペイン語のありがとう)かしら…って、
外国の犬かよ!!しかも国違うよ!!(←三村つっこみで)」

※なんかプチ外国語講座になってきたので、ここまで。
 この場合のように、ワンちゃんの入手方法として、知人からもらう、というのも一つの手である。ただその場合、運良く子犬であれば良いが、成犬の場合もあるだろう。
 子犬を譲り受ける場合、新しい環境に慣れさせるのは、比較的簡単である。変な癖とかがなく真っ白な訳だから。ただし、管理は大変なことが多い。お食事も、成犬ほどほったらかし(ホントにほうっといちゃだめよ)にはできず、ちゃんと1日に3〜4回あげないといけないし、変な癖がない分、何も覚えていない。トイレのしつけや、待て、おすわり、伏せなど…人間と暮らしていく上で、最低限必要なコマンド(命令)も知らないコがほとんどだろう。まぁ、それを一つ一つ覚えさせていくのも、ワンちゃんを飼う上での楽しみの一つではあるが、トイレなどは大抵1−2ヶ月は根気良くやらないと覚えてくれないので、大変は大変である。また、子犬の場合、伝染病も怖い。成犬なら、すでにワクチン接種済で、免疫力もしっかりしている場合が多いが、子供の場合、ワクチン未接種だったり、お母さんの母乳を飲んでいないで、お母さんから病気に対する抗体(抵抗力)をもらっていない可能性もある。その辺は、ワクチン未接種のコと近づけない、ワクチンをうち終わって免疫力が安定するまではお散歩には行かない、などの措置を講じれば、なんとか切り抜けられるだろう。そんなこんなで約1才位までくれば、安心である。免疫力も安定し、病気に対する抵抗力もつき、腸管の消化能力も安定してくるので、ちゃんとした予防(伝染病、フィラリアなど)をしていれば、1日2食でもいけ、あまり手がかからなくなる。子犬から飼う場合は、それなりに大変なことも多いが、手をかければかける程、感じる愛情もひとしおである。
 成犬の場合は…変な癖がある分、しつけのし直しは難しい。ちゃんと元の飼主に詳しい状況を知らせてもらわないと、どんなことができるのかも分からない。前の飼主が英語で「sit」って言ってたのに、「おすわり」って言ったって、ワンちゃんは理解できませんわな。それだけでなくて、新しい事も覚えにくい。やっぱり年取ると頭が固くなるのは、人間と一緒のようで…。その辺のしつけのし直しの困難さは覚悟した方がよい。また、第三者が間に入ってしまった場合、つまり元の飼い主さんから話を聞けない場合、さらに扱いは難しくなる。例えば、元の飼い主しか知らないような、ワンちゃんの特徴。雷が鳴ると下痢するとかネ。そんなの新しい飼い主は知らないし、いきなり雷雨の時に下痢されたら、訳も分からず、オロオロするのみである。原因も分からないから、放っておけば治るよ、と割り切ることもできない。そんな無駄な心配を極力避けるために、元の飼い主や、仲介してくれる人に、そのワンちゃんについて、根掘り葉掘り、もうジャガイモが掘れちゃう位掘りに掘って聞きまくっておくべきである。それは病気に関しても同じこと。一見健康に見えるけど、実は!!玉が一つしかないとか、心臓にフィラリアがいるとか、昔骨折して手術して太ももにピンが入っているとか、必要な情報は全て聞いておかなければならない。それだけの人生(犬生?)を背負ってきている訳ですから、成犬だと。まぁ、でもネ、病気に強いとか…ほら、いいこともたくさんあるし。一度飼ってしまえば、大人でも子供でも可愛いですよ。
 また、もらう、と一言で言っても、もらえる所は数多くある。当然、知り合いから、というのも一つの手だが、時々、落とし穴がある。ワンちゃんのことをあまり知らないで、なんとなくウチの犬を交配させてみて、子供を産ませて、あとは面倒見きれないから他人に譲る、という人がいる。この場合、正しい飼育方法は受け継がれない。元が正しくないかもしれないからである。だから、動物関係の仕事をしている専門家以外の、個人から譲り受ける場合は、自分でよーく勉強することが重要である。まぁ、勉強は必要ない、ということはないから、そんな場合でなくてもしておいた方がいいけどネ。あとは、保健所でも譲ってくれるところがある。捨て犬が保護されて、尊い命を奪われる前に、里親を募集して、なんとか助かる命は助けてあげたいと、努力されている自治体は多い。その場合、大抵は犬種は雑種だが、尊い命に変わりはない。雑種の方が、遺伝的な病気になりにくいという説もあることだし。そのようなことを自治体レベルではなくて、ボランティア団体がやっていることもある。当院とも関係のある某団体は、毎月のように、「譲渡会」という、里親探しの集会を開き、インターネット上にも里子の写真を掲載するなどして、広く全国から里親を募集している。このような情報はインターネット上にも数多く、全国的に広がっているので、利用されると良いかもしれない。
 あとは、動物病院での里親探しを利用するのも有効な手である。飼育に関する疑問などにはすぐにお答えしますし、ちゃんとワクチン、フィラリア、ノミ・ダニ、消化管寄生虫などの健康診断もキッチリ行ってからお渡しします。ちなみに、当院からもらわれていくワンちゃんは、初回ワクチンや避妊・去勢の手術が割り引きになるという利点もあるんですネ、これが。また、いつもいるとは限らないのですが。

教訓:
一、子犬をもらうか成犬をもらうかで、対応、心構えが変わるので、注意すべし!!
二、もらう術は数多く存在するが、正確な飼育の知識を提供してくれる所を選ぶべし!!自分で勉強するのは当たり前!!


次回、智子は、道端で運命的な出会いをする。残念ながら、相手は人間の男性ではなかった…。

獣医師:斉藤大志



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