第十一章：ワンちゃんの明るい家族計画 11-1：始めによ〜く考えて 登場人物 清美（25）：第三章の登場人物。 専業主婦をしているが、暇な時間を使って、 本物の「ヨーキー」の繁殖を勉強中。 将来、ブリーダーになる気でいる。 涼子（24）：第五章の登場人物。清美とは、ワンちゃんの散歩仲間である。 某製薬会社の人気受付嬢をしているが、 最近、メスのM・ダックス、レオちゃんを飼い始め、 密かに子供をとろうとしている。 ある朝、清美と涼子が、一緒にヨーキー＆ダックスを散歩させている時、二人が最も興味のある、ワンちゃんの繁殖のことが話題に上った。
清美「ワンちゃんってさ〜、結構多産だよネ〜。私の知り合いなんてさ〜、コーギー飼ってんだけど、この前10匹以上産まれて、もらい手探しで苦労してたよ。」 涼子「そーゆー問題もあるよネ。でも、そんなにいたら賑やかだろうネ。いきなりサッカー・チームとか作れんじゃん。」 清美「ラグビーとかもできるよネ。」 涼子「モー娘だって作れるよ!!キャーッ!!」 清美「じゃぁさ、じゃぁさ、カバディもできるよネ!!『カバディ、カバディ…』って、楽しそーっ!!」 涼子「…何それ？」 清美「何って…スポーツだけど。あれ？知らない？」 涼子「…マニアックね。誰も知らないわよ。大体、何人でやんのよ？」 ※ごめんなさい、作者も知りません。 さて、今回からは、ワンちゃんの繁殖、つまり、交配〜妊娠〜出産〜育児までを紹介したいと思います。ただ〜しっ!!まず始めに、ワンちゃんの繁殖が、どれだけ大変で、どれだけリスキー（危険）で、どれだけハスキーか（それは慎也のハー君）、お話したいと思います。 ・避妊・去勢手術をしていないと… 5-4でも書いたが、避妊・去勢の手術をしていないと、色々問題が出てくる。例えば、男の子なら、マーキングの行動、攻撃的などの行動の問題や、前立腺肥大、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫、精巣の腫瘍などの、去勢手術していない男の子に多い病気。女の子なら、生理中の出血や、望まれない子供の妊娠、子宮蓄膿症、卵巣・子宮の腫瘍などの、避妊手術していない女の子に多い病気や、乳腺腫瘍などの発生率の上昇などである。 これらのことは、避妊・去勢をしないと、一生ついて回る悩みなので、お子さんをとる予定がないのであれば、早々に手術しましょうネ。「一回位はこの子の子供が見たいわ…。」という飼い主様もいらっしゃるかと思いますので、そんな方は、早めに子供をとり、できるだけ早く!!そう、アズ・スーン・アズ・ポッシブル（受験に頻出の熟語）、手術をしてあげて、ワンちゃんも人間も快適に長生きできるようにしましょう。 ・運命の相手を見つけるには
そーゆー有名所のだんな様なら、結構安心だが、中には、遺伝的にあまり良くない性質を持ち合わせたワンちゃんを、種犬として出しているところもある。それも、分かっていて出しているのなら、「悪質〜…」と攻め立てられるのだが、ほとんどが知らぬ間に、である。先天的心疾患、先天性口蓋裂（上あごが割れている）、凝固系異常（血が止まらない病気）、潜在睾丸、遺伝的白内障などなど…遺伝的なものとして認められている病気を持ったワンちゃんは、当然、繁殖に参加しないほうが良いが、そのようなものが症状として表に出ていない若い内に繁殖に使用された場合、誰がその飼い主様を攻められようか、いや、攻められない。そのような遺伝的な異常があるワンちゃん、また、その両親は、繁殖に使用しないほうが良いので（その子が遺伝的に異常なら、その子を作り出した両親も異常の可能性があるから）、
・人工的な交配はストレスがいっぱい 交配する日、大抵は女の子が男の子（種犬）の所に、遠路はるばる運ばれて行くことが多いが、それがまずストレスになる。 で、男の子と女の子が始めて出会った時、また問題が生じる場合がある。それは、飼い主様の、交配適期の判断ミスである。4-4で詳しく書いたが、男の子は、性成熟した後は万年発情、いつでもOK!!だが、女の子は、そこまでデリカシーに欠けていなくはない。もっとナーバスで、発情する時期があるし、その中でも、交配に適した時期というものがある。難しく言うと発情期の頃であるが、もっと分かり易いのは、その行動。
男の子と女の子は、初めて引き合わされた時に、普通、気が合えば、じゃれ合う。で、女の子は次第に落ち着き、尻尾を片側にそらして立ち、交尾を受け入れる体勢をとる。ただし、いつもこんな風にしてくれる訳ではないので、必要なら、女の子の方の首根っこを押え、動かないようにする。これもなんか可哀想だよネ。 男の子はと言うと、交尾前に、少量の透明な液をペニスから出すことこともある。これは精子を含まない「最初の分泌物」であり、前立腺から分泌されて、尿道から、尿や細胞のカスを洗い流す役目をする。その後、男の子は女の子の上に上り（マウンティング）、ペニスの先が膣の中へ入るまで、ゆっくりと突き入れ始める。次第に突きの動作が速くなり、ペニスは膣の中へ入り、男の子は完全に勃起した状態に達する。この時、精子を含む「第二の分泌物」を出し、その後、男の子はクルッと180°向きを変えて、女の子から下りるが、ペニスはまだ膣の中にある。この状態をコイタル・ロックと言う。coitalは「交尾の」、lockは「固定」の意である。丁度、お尻とお尻を突き合わせた状態になる。この動作により、精子を子宮の中へ流し込む、「第三の分泌物」の射出が促される。この段階がかなり長時間かかり、20分、またはそれ以上、ず〜っとその状態で二人がじっとしている。昔はよく、野良犬同士がこのような行為をしている所に、バケツで水をかけると、ワンちゃんがビックリして、コイタル・ロックのまま外れなくなり、慌てふためく、なんて、酷い遊びがあったそうだが、そんなことは絶対にしてはいけない。この行為は、一見お間抜けだが、ワンちゃん同士の大切な子孫繁栄のための行為なのだから。
「どーする？アイフ○？」のCM効果か、巷ではチワワが大流行（'03年3月現在）。ちょっと前まではM・ダックスでしたが。とにかく今や小型犬はペットの中でも大人気であります。で、「あんな可愛い子、飼いた〜い」とか、「この子（チワワ）の子供が見た〜い」などと考えている人が多いかと思います。でもネ、ちょっと待って下さい。あんな小さい子が子供を生むんですよ。子供が子供を生むようなもんだと思いませんか？ 何を言いたいかというと、小型犬は、大抵、難産だということです。（胎児数も少ない！）出産前の妊娠検査（後の章で詳しく!!）でも、分娩直前のレントゲンを撮った時、「どー見ても、これは骨盤通らない（胎子が大きいので、産道を通って生まれない）だろう…」と思うのは、大抵、小型犬。自宅での分娩中、「全く出ないので…」と夜間緊急回線に電話がかかってくるのも、大抵、小型犬。そのまま、夜に動物病院のスタッフをかき集めて、帝王切開をしたりするのも、大抵、小型犬。 このように、小型犬の出産は特に、ワンちゃんも飼い主様も疲れます。ついでに動物病院のスタッフも疲れます。で、帝王切開ともなるとお金もかかります。「チワワは流行りだから、自分チで繁殖して儲けよー!!」などと考えているそこのあなた。止めた方が良いですよ…。 教訓： 一、ワンちゃんの繁殖は、感動的なシーンも多いが、疲れる、つらい、厳しい現場であることも認識すべし!! 次回は、妊娠検査についてです。「ひょっとして、赤ちゃん？」と思ったら…。 獣医師：斉藤大志
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