◇第6回 ―“ペットの薬”編― 今回は特に犬猫製品で多く見られるペットの薬についてです。 最近スーパーのペットコーナーでもずらりと並んだ薬の棚をよく見かけます。以前に 書いたノミやフィラリアの薬、昔からある虫下し以外にも色々出ているようです。 例えば、ビタミン剤、目薬、下痢止め、皮膚病の薬、乗り物酔い止め、はてはストレスを取る薬や疲れた時に元気が出る薬などといったものもありました。あまりに沢山あるので驚きましたが、逆にこれは良くないぞと思い、取り上げる事にしました。 それぞれに勧められない理由がありますので、参考にしてみて下さい。 @ノミの薬について 第2回ノミ関連製品編を参考にして下さい。 Aフィラリアの薬について 第4回蚊の予防製品編を参考にして下さい。 B虫下し 一口に消化管内寄生虫といっても様々です。回虫(かいちゅう)、鈎虫(こうちゅう)、鞭虫(べんちゅう)、猫胃虫(ねこいちゅう)、毛細線虫(もうさいせんちゅう)、糞線虫(ふんせんちゅう)、瓜実条虫(うりざねじょうちゅう)、猫条虫(ねこじょうちゅう)、マンソン裂頭条虫(れっとうじょうちゅう)、コクシジウム、腸トリコモナス、ジアルジア、トキソプラズマなど多種多様に渡ります。当然それぞれに合った駆虫薬が必要になります。 通常の虫下しに含まれている成分は線虫類の一部にやや有効性を示す程度で、その他には全く効きません。また犬ならば当然行うフィラリア予防薬が一部の線虫類を駆除してくれます(詳しくは第4回蚊の予防製品編や医療情報を参考にして下さい)ので、種類によっては必要ない場合もある訳です。その他、寄生虫の場合は感染経路などを考慮する必要も多いです。 C目薬 眼は全身を映す鏡のようなものです。体調や多くの全身疾患症状の一つとして眼の病変が出る事もあるし、眼の病気自体も様々なものがあります。病気の種類や重症度によっては失明の可能性もあります。また適切な処置や治療を施さないと、動物もかなりの苦痛を味わう事になります。市販の動物用目薬はホウ酸を主成分としたものが多く、治療というよりは洗眼して清潔にしている程度にしか過ぎません。 D下痢止め、皮膚病の薬 下痢や皮膚病は最もよくなりやすく、最も難しい病気かも知れません(と、私は思っています)。非常に多くの病気の結果として下痢あるいは皮膚病変が出現する可能性があります。きちんとした診察、検査を行わないと治らないどころか、非常に重度な慢性疾患になる可能性があります。 E乗り物酔い止め 乗り物酔いも動物にとっては深刻な問題です。長時間のドライブや列車、飛行機、船などの移動では動物もかなり衰弱してしまう可能性があります。その個体によっては単純な動揺に対するめまい様症状の処置だけでなく精神的不安に対するケアが必要な場合もあります。それぞれに適した薬を選択しないと効果が得られず、動物の苦痛も取り去ることが出来ないばかりか、体調を崩して病気になる可能性もでてきます。 Fビタミン剤、ストレスを取る薬、元気の出る薬、その他 うーん、薬と言うのでしょうか?効果も内容もはっきりしない物を与えるほうが問題ではないかと思います。 【アドバイス】 いずれの場合にもあてはまる事ですが、異常や心配事があれば動物病院に相談するのがベストです。特に病気の症状については素人判断せずに獣医師の診察、検査を受け、診断に基づいた適切な治療を行うようにしましょう。もの言えぬ動物たちが症状を出したとき、それは病気という大きな氷山の一角が見えているだけかも知れません。皆さんは、病気で“本当に”辛い時に病院でお医者さんの診察を受けずに薬局のお薬で済まされますか?愛するペットのために、より良い方法を選んであげて下さい。 獣医師 音成 伸悟 |
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