◇第3回 ―ウサギの食餌編―

第3回はウサギについてです。ウサギの場合、比較的ペット製品も改良されて良いものが増えてきました。しかし未だに“これはマズイ”と思うものが食餌に関連した製品にみられます。


今回はウンチクを先に書いておきますので、じっくり勉強してみて下さい。
まず忘れてならないのは、『ウサギは草食動物である』という事です。つまり通常なら草の葉や根を主食として生きています。食べた草や根をお腹で微生物の力を借りて発酵させる事で消化吸収し、エネルギーとして利用するのです。飼い主さんの中にはウサギもリスもハムスターも“似たようなもの”として考える人もいます。(私たち獣医師の中にもいるんですが…)
しかし同じ草食動物でも実際にはかなり異なっていて、歯の形態や伸び方・必要とするエネルギー内容・腸の長さなどを考えると“全く別もの”と思って欲しいくらいで、人間のベジタリアン(菜食主義)のように一つのグループではありません。
医食同源という諺がありますが、ウサギではこれが本当に大切なのです。

ウサギの食餌で注意して欲しいKey Wordは、
@線維質(食物線維)
A粗灰分(特にカルシウム) 
B糖分(甘くないか?)
です。


@線維質(食物線維)
線維質の重要性は既に記載した通りで、とにかく食物線維は大切です。 
16%、できれば18%以上含まれているものが最も良いのですが、普通のペットショップやペットコーナーでは、残念ながらほとんど見かけず入手できません。これはやはりペットとしてのウサギがあまり食べてくれない為に売れないから、というのが理由のようです。でも中には12%以下なんてのもあり、こういった含有量が低いものは論外と考えて下さい。ウサギの歯と胃腸と健康を考えるならばできるだけ線維含量の多いものを選びましょう。


A粗灰分(特にカルシウム)
ウサギの尿を見てみると、たまに濁っている事があります。濁りの成分はカルシウム結晶で、ある程度までは正常な尿とされています。これはウサギが食餌中のカルシウムのほとんどを吸収して、腎臓から尿中に排泄する構造になっているために起こります。しかしこの状態が続くと、結晶はやがて結石となり、膀胱炎や膀胱結石を引き起こす可能性があります。

B糖分
フードの成分で言えば炭水化物に含まれますが、問題となるのは添加された甘味やヒトのお菓子を与えた場合です。これらは肥満と嗜好性の変化(要は好き嫌いが強くなる)をもたらします。また腸における正常な発酵消化にも影響する可能性があります。

少し難しくなりましたので、具体的に書いてみると“買ってはいけない!”ものには次のような製品があります。

ちょっとおかしなペレットフード達
まず成分表示を見てください。線維質の含有量が15%以下のものは本来適していません。また、粗灰分(特にカルシウム)が多くものや、〜%以上と表示されている場合、カルシウム含有量が多過ぎる事も考えられるので注意が必要です。
あと、個人的にはパッケージに大きくソフトタイプと書かれている物もお勧めできません。

線維質の重要性は既に記載した通りで、とにかく食物線維は大切です。16%、できれば18%以上含まれているものが最も良いのですが、残念ながら日本メーカーではほとんど入手できません。これはやはりペットとしてのウサギがあまり食べてくれない為に売れないから、というのが理由のようです。でも中には12%以下なんてのもあり、こういった含有量が低いものは論外と考えて下さい。ウサギの歯と胃腸と健康を考えるならばできるだけ線維含量の多いものを選びましょう。

粗灰分についても先に書きましたが、尿石症の予防も大切です。カルシウム摂取量が多いと尿のカルシウム排泄量も増え、膀胱炎や膀胱結石を引き起こす可能性があります。
ソフトタイプがダメな理由は、ウサギの歯に関連した問題です。基本的にウサギの歯は一生伸び続けているため、それを磨り減らすためにはフードは硬いほうがより良いと考えます。ペレットフードの硬さ位ではそれ程効果がないのでは?とか、かじり棒を与えているので問題無いという声も聞きますが、恐らく皆さんのイメージしているのは切歯(門歯、前歯)の事でしょう。確かにペレットフードが少し硬めになった位では切歯が磨り減るとは思えませんし、硬い棒などを齧らせたほうがよく削れるでしょうが、臼歯(奥歯)をすり減らすには、硬くて線維質の多いフードが非常に有効となります。
ウサギがフードを食べている時に、正面からよく観察してみましょう。
大きな物を切歯で齧ったあと、顎を左右に動かしながらモグモグしていますよね。この時に臼歯を使って食餌を咀嚼している訳です。つまり硬くて飲み込みにくいフードだと、当然このモグモグ時間が長いために上下の臼歯が擦り合わされ、お互いに削り合ってくれて伸び過ぎを予防してくれるのです。

ミックスフード
何故かハムスターやリスのように、シード(種子)類やドライフルーツが混ぜられた食餌がウサギ用として売られているのを見かけます。

線維質の話も関係ありますが、ウサギが真に草食動物である事をよく考えてあげましょう。通常の生活では、果物や種子ではなく草や根を食べている訳ですから、種子などの穀物類の多給を行うと腸内での正常な発酵に悪影響を及ぼす可能性があります。果物の多給もやはり腸内での異常な発酵を引き起こしたり、美味しすぎてペレットフードを食べなくなるといった欠点があります。

カルシウム入りかじり棒
木などは良いのですが、このカルシウム補給と明記されたかじり棒はいただけません。

理由は粗灰分の多い食餌で書いたのと同じです。基本的にカルシウムは食餌で十分に摂取出来るので、余分に与えると尿石症の元になるだけです。かじり棒はやはりシンプルな木が一番ではないかと思います。

はちみつ入りのトリーツ(おやつ)
いかにも、という感じのおやつですが、、、。

やはり美味しすぎるものは、要注意です。糖分取りすぎによる肥満・偏食によりペレットを食べない・胃腸への影響などを引き起こすので、極力与えないか、量を考えてあげるようにしましょう。


【アドバイス】
しつこいようですが、草食動物だという事を頭に入れて置いて下さい。
お勧めの食餌は次のようになります。

@ペレットフード

 やはり基本はペレットです。製品の選ぶポイントは線維質の含有量が一番多いもので、粗灰分やカルシウムが出来るだけ少ないものが良いでしょう。あとはソフトタイプと書かれていないものがお勧めになります。またつい最近ですが、イースター株式会社という所から理想的なウサギ用のペレットフードが販売されました。これはこれまで述べてきたようなウサギの病気の予防も含め十分に考えられて作られたプレミアムフードです。当院も含め、一部の動物病院ではこういったウサギ専用プレミアムフードが手に入りますので、ペットショップではなく動物病院にフードを買いに行くのも良いかもしれませんね。



A干草、切り藁(ワラ)
これもウサギには非常に合っています。床材にも使えるし、線維質が十分過ぎるほど取れるので臼歯の伸びすぎ防止には特に有効です。
注意すべきは、原材料がアルファルファ主体だとカルシウムが多くなるので、チモシーなどのイネ科植物が主体のものを選んで下さい。



B生野菜
やはり新鮮な生の野菜もたまに与えましょう。
与えて良い野菜:ブロッコリー、キャベツ、ニンジン、ニンジンの葉、 小松菜、チンゲン菜など
いけない野菜 ;ネギ、玉ねぎ、ニラ、ニンニク、セロリ、アボガド等


C野草
与えて良い野草:イネ科の植物、オオバコ、ハコベ、クローバーなど
ダメな野草   観葉植物など


Dおやつなど
おやつと食餌が逆にならないように量と回数をよく考えて与えてくだ
さい。先に書いた生野菜をおやつ代わりに与えるのが良い方法です。市販品はあまりお勧めできませんが、乳酸菌製剤(ヨーグルトや乳酸菌入りスナック)などはお腹にも良いので与えてみるのもいいでしょう。


【食餌の与え方】
基本的に夜行性なので夕方をメインにして食餌を与えましょう。
前述したような良質のペレットフードを、ウサギが食べきる量(例:パッケージに記載してある一日給餌量の約8割程度)を与え、ペレットの入れっ放しはしないようにします。そこにイネ科植物主体の干草やワラを十分に与え、ペレットを食べ尽くしたらそれらを食べるようにしつけます。
あとは新鮮な野菜や野草を少量与えるようにしましょう。


【 まとめ 】
イヌ・ネコでもそうですが、いつも同じ餌ばかりじゃ可哀想というのは人間の考え方でしかありません。むしろ甘いものや、おいしいけれども栄養バランスの悪いフードを食べて病気になるほうが余程可哀想なのではないでしょうか?おいしいものや欲しがるものばかりを与える事が、決して愛情では無い事を理解して下さい。皆さんは動物を飼った時から、そのコの健康をしっかり管理する責任があるのです。あなたの大切な家族であるペットがいつまでも健康でいられるように、もう一度良く考えてあげましょう。

獣医師  音成 伸悟


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